南海トラフ地震。予測される震度7の揺れは、あなたの街を一変させます。太平洋沿岸部には、数分で巨大な津波が押し寄せる。一方、千葉や能登、福井など、日本各地でレベル5の豪雨災害も頻発しています。
災害が起きたとき、認知症家族を抱えたまま、あなたはどのように防災、減災すべきか。
日常生活の中で行える実践的な備え、対策を、私の20年の知見とキャラバンメイトとしての視点から、具体的に解説します。この記事を読むことで、災害時のパニックを軽減し、命を守るための具体的な行動が見えてくるはずです。
日常生活の中に「防災」を溶け込ませること=最強の減災対策
なぜ、そう言い切れるのか。まずは、災害時に認知症家族を襲う「混乱」の現実を、具体的にイメージすることから始めましょう。
1. 災害時に認知症家族を襲う「2つの混乱」と命の危険

災害時、認知症家族は「環境の変化」と「情報の遮断」という2つの混乱に直面し、介護者も含めて命の危険に晒されます。
家族も含めた具体的な困りごと事例
- 「ここはどこだ!」「お腹すいた」を繰り返す: 避難所や、自宅であっても停電した暗闇の中で、状況が理解できず、パニックになります。同じことを何度も聞き、日ごろ落ち着いていたBPSD(周辺症状)が様々な形で現れ、介護者も精神的に追い詰められることは十分想定されます。
- 「お薬手帳」がない!何の薬か分からない: 災害時、お薬手帳がどこにあるか分からず、処方箋も確保できない。何の薬を飲ませればいいか分からず、持病が悪化する危険があります。
- 避難所で迷子、服薬拒否: 南海トラフ地震では、数百万人の避難者が想定されます。その混乱の中で、家族が迷子になる。また、なじみのない状況で、薬を飲むことを拒否する。
- 介護者の孤立: 救援が遅れ、助けを求めることもできない。認知症本人だけでなく、介護者も助けを出すことが出来ない。または、SOSをだしても周囲も手一杯でそれにこたえることが出来ない。
これらの混乱から家族を守るためには、災害が起きる前の「日常生活の備え」が全て。では、具体的に何をするべきか。私の知見を、実践しやすい形で、結論から順にお伝えします。
2. 日常からできる「防薬」:命を繋ぐお薬手帳の活用

結論:命を守る最重要アイテムは「お薬手帳」の常時携帯と、予備薬の確保。
お薬手帳は命のカルテ
お薬手帳(おくすりてちょう)は、あなたが今、どのようなお薬を、どのくらいの量、どのくらいの期間、飲んでいるかが書かれたもの。災害時、医師や薬剤師は、このお薬手帳の情報をもとに、あなたの代わりに処方箋を書き、薬を調剤します。お薬手帳がないと、お薬を渡せない。できれば、電子お薬手帳とは別に、紙のお薬手帳もあると安心です。災害時は、スマートフォンの充電も時限的です。紙の記録があれば、充電を気にしなくてもいいでしょう。
実践方法
- お薬手帳の常時携帯: 介護者のあなたが常に携帯する。あるいは、本人のカバンに必ず入れておく。
- 写真保存: スマートフォンでお薬手帳の全ページを撮影し、クラウド(インターネット上の保存スペース)に保存しておく。コピーを防災グッズに入れる。
- 予備薬の確保: 薬剤師に相談し、最低3日分(できれば1週間)の予備薬を、防災リュックに入れておく。定期的に新しいものと入れ替える「ローリングストック」を。
日常から、服薬カレンダーやケースを活用し、服薬を習慣化させることも災害時の混乱を防ぐことに繋がります。
日常の服薬管理が、災害時の混乱を防ぐ
災害時、なじみのない場所でも、日常の「服薬の習慣」が残っていれば、スムーズに薬を飲めることがあります。そのためにも、日常の服薬管理を徹底しましょう。お薬カレンダーやケースを使えば、一目で「いつ」「何を」飲めばいいかが分かり、本人も介護者も安心。
3. 日常生活で行う「住環境」の減災と「つながり」の構築
結論:家具固定で転倒を防ぎ、SOSネットワーク登録で孤立を防ぐ。
住環境の減災は基本
高齢者は転倒しやすい。災害の揺れで家具が倒れ、転倒や下敷きになるリスクは高い。
- 家具の固定: 耐震マットやストッパーなどで、タンス、冷蔵庫などを固定する。
- 動線の確保: 避難経路となる廊下や出入り口に、荷物を置かない。
- お気に入りのアイテムを近くに: なじみの毛布、音楽(MP3プレーヤー)、写真など、本人が落ち着くものを、すぐに持ち出せる場所に置く。
「つながり」の構築が孤立を防ぐ
災害時、介護者一人で家族を守るのは困難。地域とのつながりこそが、命を救います。
- SOSネットワークへの登録: 多くの自治体で、認知症で行方不明になった人を地域で捜索するシステムがあります。事前に登録しておく。
- 近所への声掛け: 日頃から「認知症の父がいます」と、近所に声を掛け、何かあった時の協力を依頼する。
- ケアマネジャーとの連携: 災害時の福祉避難所の確認や、緊急時の連絡体制について、ケアマネジャーと相談しておく。
4. いざという時の避難計画と、パニックを防ぐコミュニケーション
結論:福祉避難所の確認と、本人の不安に寄り添う声掛け。
避難計画の具体化
一般的な避難所では、認知症の対応が難しいことがあります。
- 福祉避難所の確認: 担当のケアマネジャーに、お住まいの地域の「福祉避難所(ふくしひなんじょ)」の場所と受け入れ条件を確認しておく。
- 避難経路の散歩: 災害を特別なことにせず、日常生活の中で、避難経路を散歩する。「あそこの公園が避難場所だよ」と、何度か伝える。
パニックを防ぐコミュニケーション
なじみのない状況で、本人は不安でいっぱい。介護者の焦りは本人に伝わります。
- 肯定、共感: 「大丈夫だよ」「怖いね」と、本人の感情を肯定し、共感する。「ここはどこ?」と聞かれたら、「〇〇公園だよ。みんながいるから安心だよ」と、落ち着いて伝える。
- 背中をさする: 身体的な接触は、安心感を与えます。
- お気に入りの音楽や香りを: 災害時の混乱の中、お気に入りの音楽を聴いたり、好きな香りを嗅いだりすることで、リラックスできる。
5. おすすめ防災グッズ
災害時の混乱を軽減し、命を守るために役立つ、日常生活でも使えるグッズを紹介します。
徘徊・迷子対策の決定版
災害時の混乱の中で、家族が行方不明になることほど、怖いものはありません。GPS見守り器があれば、いつでも本人の居場所が分かり、早期発見に繋がります。日常生活の徘徊対策としても、介護者の精神的な負担を大幅に軽減するアイテム。
6. まとめ

認知症家族を守る防災・減災。それは、特別なことではありません。
日常生活の中に、「お薬手帳の常時携帯」「家具固定」「SOSネットワーク登録」「避難所の確認」といった、小さな「防災」を、一つずつ積み重ねていくこと。そして、本人の不安に寄り添う、日常のコミュニケーション。
完璧を目指す必要はありません。できることから、一つずつ、始めてみましょう。
災害は明日、来るかもしれない。備えは「今」から。
出展
- 内閣府「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う注意呼びかけの終了について」
- 気象庁「災害から命を守るための情報」
- 厚生労働省「お薬手帳」
- 自治体(千葉県、能登半島、福井県など)の防災情報ホームページ


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