フレイル防止に効く!エンシュアHとメイバランスを徹底比較|薬剤師が症例で解説

生活支援

はじめに:

「母が退院してきたとき、体重は5kgも落ちてしまっていました。食欲がなく、茶碗半分のご飯で精いっぱい。主治医から『しばらくは栄養補給が大切です』と紹介されたのがエンシュアHでした。

最初は『薬っぽい味で続けられるのかな…』と不安でしたが、少ない量でしっかりカロリーが取れるため、母の体力は少しずつ回復していきました。

一方で、在宅生活が落ち着いてからは、家族がドラッグストアで買えるメイバランスを試しました。甘さや飲みやすさがあり、『これなら続けられる』と母も笑顔に。今では食事が十分とれない日の補助として、メイバランスを常備しています。」

このように、同じ「栄養剤」であっても、エンシュアHメイバランスでは使われる場面や利便性に違いがあります。


1. エンシュアHとメイバランスの特徴

エンシュアH(医療用)医薬品

  • 医師が処方する高カロリー流動食(1.5 kcal/mL)。
  • 250mL缶で375kcal、たんぱく質13g前後。
  • 経口だけでなく経管投与も可能。
  • フレーバーは複数あるが「医療用飲料」という印象は強め。

メイバランス(市販)食品

  • ドラッグストアや通販で購入可能。
  • 代表的なメイバランスMiniは125mLで200kcal、たんぱく質7.5g前後。
  • 味のバリエーションが豊富で、食品感覚で続けやすい。
  • 主に経口摂取用。嚥下対応のゼリータイプもあり。

2. 実際に使用してみた比較症例

症例A:入院後の体力低下が強いケース(エンシュアH)

80歳女性。誤嚥性肺炎で入院し、退院時には著しい体重減少と筋力低下がみられました。
主治医の指示でエンシュアHを1日1〜2缶導入。

  • メリット
    • 少量で高カロリーを確保でき、1〜2週間で歩行の安定が改善。
    • 医療者が摂取量や便通をチェックでき、安心感があった。
  • デメリット
    • 味に慣れるまで「薬っぽい」と嫌がる場面あり。
    • 腹部膨満感が出たため、飲むペースをゆっくりに調整した。

症例B:在宅で食欲低下が続くケース(メイバランス)

75歳男性。軽度認知症があり、料理を作る意欲が低下。食事量も少なくなり、家族が「栄養補助を」と考えてメイバランスMiniを購入。

  • メリット
    • 小容量で飲みきりやすく、味が「ミルク系デザートのようで飲みやすい」と好評。
    • ドラッグストアで簡単に手に入るため、家族が気軽に続けられた。
    • 食事がとれない日の安心材料になった。
  • デメリット
    • たんぱく質量は1本で7〜8gと控えめで、十分な補給には複数本必要。
    • 甘めの味を嫌うと続けにくい。
    • 医師管理下ではないため、摂りすぎや他の薬との相互作用には注意が必要。

3. メリット・デメリットまとめ表

項目エンシュアHメイバランス
入手性医療機関で処方ドラッグストア・通販で購入可
エネルギー密度1.5 kcal/mL(高濃度)1.6 kcal/mL相当だが小容量
たんぱく質1缶で13g前後1本で7.5g前後
医療飲料らしさがある甘めで嗜好性が高い
使用シーン入院直後・体重減少が著しいとき在宅での補助・軽度フレイル予防
費用医療保険が効く場合あり自費(1本200円前後)
継続性味に飽きやすい味の選択肢豊富で続けやすい

4. どう使い分けるか

  • 医療管理が必要な時期
    体重減少が強い、病後の回復期などはエンシュアHを医師管理下で導入すると効果的。
  • 在宅での補助
    食事が少ないときの「栄養の保険」としてはメイバランスが手軽で続けやすい。
  • 併用・移行も選択肢
    入院中〜退院後はエンシュアH、その後在宅安定期にはメイバランスといった使い分けも現場では多く見られる。

:介護現場での工夫された飲ませ方

実際の介護現場では、栄養剤をそのまま飲むことが難しいケースが少なくありません。甘さや独特の風味、量の多さから高齢者が「飲みきれない」「飽きてしまう」と訴えることもあります。そのため、スタッフや家族がさまざまな工夫をしています。

  • 温めて香りを和らげる
     常温や冷たいままだと甘さが強調される場合があります。湯せんで人肌程度に温めると風味が和らぎ、飲みやすくなることがあります。
  • プリンやヨーグルトに混ぜる
     栄養剤をそのまま飲むのが苦手な方には、少量をプリンやヨーグルトに混ぜて食べてもらう工夫もよく行われています。特にメイバランスはデザート感覚で取り入れやすいと好評です。
  • コーヒーや紅茶に加える
     味の単調さを避けるために、少量をコーヒーや紅茶に混ぜて風味を変える方法もあります。苦味と甘味がバランスし、飲みやすくなる方もいます。
  • 少量ずつ分けて提供する
     一度に飲みきれない場合は、1本を3回程度に分けて提供します。食事ごとに少しずつ飲むことで負担が減り、最終的に必要量を摂取できるケースもあります。
  • とろみをつける
     嚥下障害がある方には、とろみ剤を加えて誤嚥リスクを下げる工夫も現場では一般的です。

こうした小さな工夫を積み重ねることで、摂取量が安定し、結果的にフレイル予防につながります。


まとめ

エンシュアHとメイバランスは、どちらも高齢者の栄養補助に役立つ製品ですが、使う場面や目的は異なります。

  • エンシュアHは「医療用でしっかり補給したいとき」
  • メイバランスは「在宅で気軽に補助したいとき」

症例に見るように、それぞれのメリットとデメリットを理解し、本人の状態・嗜好・生活環境に合わせて選ぶことが大切です。

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