「退院して自宅に戻ったけれど、薬の管理が大変すぎる」 「親が薬を飲んだかどうかわからず、毎回ケンカになってしまう」
在宅介護や在宅医療の現場で、このようなお悩みをお持ちではありませんか?
医師や看護師が自宅に来てくれることは知っていても、「薬剤師が家に来る」ことのメリットを詳しく知っている方はまだ多くありません。しかし、結論から申し上げます。在宅医療において、薬剤師の介入は「薬による事故防止」と「介護者の負担軽減」のために不可欠です。
今回は、なぜ在宅医療に薬剤師が必要なのか、その理由を具体的な事例や数字を交えて、プロの視点から徹底解説します。
結論:薬剤師は「薬の交通整理」。生活を守る安全装置

在宅医療に薬剤師が入る最大の理由は、「複数の病院から出される薬の飲み合わせチェック」と「生活スタイルに合わせた服薬管理の提案」ができる唯一の専門職だからです。
医師は「診断と治療」のプロですが、患者様の自宅にある「飲み残しの薬(残薬)」や「健康食品との飲み合わせ」まですべて把握することは困難です。ここで薬剤師が登場し、薬に関する情報を一本化(一元管理)することで、医療の質と安全性が劇的に向上します。
なぜ必要なのか、大きく分けて3つの理由があります。
- 服薬管理の適正化(飲み忘れ・飲み間違いの防止)
- ポリファーマシー(多剤併用)の解消と副作用の発見
- 医療費の削減と「残薬」の解消
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由1:服薬管理の適正化~プロの技で「飲める」環境を作る~

「飲めない」には理由がある
「薬を飲まない」のではなく、「飲めない」環境にある患者様は非常に多いです。 手が震えてシートから薬が出せない、認知機能の低下で朝と夜の区別がつかない、単に数が多すぎてお腹いっぱいになってしまう…。
薬剤師は自宅を訪問し、患者様の手の動きや生活動線を確認します。その上で、以下のような「一包化(いっぽうか)」や工夫を行います。
- ※用語解説:一包化(いっぽうか)
- 朝・昼・夕など、飲むタイミングごとに複数の薬を1つの袋にまとめること。「◯月◯日 朝」などの印字も可能です。
事例:カレンダー管理で劇的に改善
ある80代の女性患者様は、テーブルの上に薬が散乱していました。訪問した私が提案したのは、壁掛けの「お薬カレンダー」の設置と、薬の一包化です。さらに、薬の袋に「日付」と「曜日」を大きく印字しました。 結果、ヘルパーさんやご家族が一目で「飲んだかどうか」を確認できるようになり、飲み忘れがほぼゼロになりました。

理由2:ポリファーマシーの解消と副作用の早期発見
薬が増えるとリスクも増える
高齢になると、整形外科、内科、眼科など、複数の病院にかかることが一般的です。すると起こりやすいのが「ポリファーマシー」という問題です。
- ※用語解説:ポリファーマシー(多剤併用)
- 多くの薬を服用しているために、副作用が出たり、薬同士の飲み合わせが悪くなったりしている状態のこと。単に薬が多いだけでなく、「害が出ている」状態を指します。
薬剤師の視点:重複投薬の防止
「A病院で痛み止めが出ているのに、B病院でも別の名前の痛み止めが出ていた」 これは珍しいことではありません。薬剤師は「お薬手帳」などを通じて全ての薬をチェックし、重複や危険な飲み合わせを見つけます。 医師に対して「こちらの薬は重複しているので削除しませんか?」と提案(処方提案)できるのは、薬の専門家である薬剤師の強みです。
理由3:医療費の削減と「残薬」の解消
家に眠る「500億円」の山
飲み忘れなどが原因で、手元に残ってしまった薬を「残薬(ざんやく)」と言います。 日本薬剤師会の推計などによると、日本全体での残薬の価値は年間約500億円にも上ると言われています(※出典などの推計値より)。
薬剤師による「残薬調整」
訪問薬剤師は、自宅にある残薬の数を数えます。 「まだ以前の薬が10日分残っていますね。今回は処方日数を10日分減らしてもらうよう、先生に連絡しておきます」 このように調整することで、患者様が支払う薬代を安くし、国の医療費の無駄も防ぎます。
現場の声:他職種連携における薬剤師の役割
在宅医療はチーム戦です。医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなどが連携します。 ここで薬剤師は「薬の通訳」としての役割を果たします。
ケアマネジャーさんの証言
「私たちケアマネジャーは、利用者様の生活全般を見ていますが、薬の詳しい効果や副作用までは判断できません。『最近、利用者様がふらつくんです』と薬剤師さんに相談したら、『睡眠薬が効きすぎている可能性がありますね』とすぐに医師に連絡してくれて、薬が調整されました。あの連携の速さには助けられました」
このように、日常の変化を「薬の影響かもしれない」と疑い、医学的な根拠を持って医師に繋ぐことができるのが薬剤師です。
導入の流れと費用について
在宅での薬剤師訪問を利用するには、医師の指示が必要です。
- 相談:医師、ケアマネジャー、または薬局に相談する。
- 指示:医師から薬局へ「訪問指示」が出る。
- 契約:薬剤師が訪問し、契約と計画作成を行う。
- 開始:定期的な訪問とお薬のお届けがスタート。
費用の目安(介護保険利用・1割負担の場合)
- 居宅療養管理指導費:1回あたり 517円(月2回までなどの制限あり)
- ※お住まいの建物(一軒家か施設か)や、薬局の体制によって異なります。詳しくは担当のケアマネジャーやお近くの薬局にご確認ください。
まとめ:安心な在宅生活のために

在宅医療に薬剤師が必要な理由、ご理解いただけましたでしょうか。
- 正しく薬を飲める環境を作る(一包化・カレンダー)
- 危険な飲み合わせや副作用を防ぐ(ポリファーマシー対策)
- 無駄な薬を減らし、医療費を節約する(残薬調整)
薬は正しく使えば健康の味方ですが、管理を間違えれば毒にもなり得ます。 ご家族だけで抱え込まず、ぜひ「オレンジ色のベストを着た薬のプロ」を頼ってください。私たちは、患者様が住み慣れた家で、最期まで自分らしく過ごせるよう全力でサポートします。
不明な点や、具体的な導入方法については、かかりつけの医師や地域の薬局へお問い合わせください。個別のケースについては確認できませんが、一般的な制度についてはケアマネジャーさんも詳しくご存知です。
【出典・参考】
- 厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局機能及び在宅業務について」
- 日本薬剤師会「在宅医療への取り組み」
「薬を整理したけど、結局いつ飲むのか分からなくなる…」そんな悩みを一発で解決するのが、このお薬カレンダーです。 薬剤師の私も在宅訪問で最初におすすめするアイテム。ポイントは「ポケットの透明度」と「出し入れのしやすさ」。 一週間分をセットしておけば、飲み忘れが一目瞭然。「あれ?今日飲んだっけ?」という不毛な会話がなくなりますよ。ご家族の安心のために、まずはここから始めてみませんか?👇

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