フレイルと認知症は悪循環する?原因と社会参加という予防策

最近、「親の足腰が弱ってきて、物忘れも増えた気がする」「体が動かなくなると、頭も働かなくなるのかな?」といった相談を薬局でよく受けます。

結論から申し上げますと、「フレイル(虚弱)」と「認知症」は、密接に関係しており、互いに悪影響を及ぼし合う負のサイクル(悪循環)があります。

しかし、怖がる必要はありません。この関係性を正しく理解し、適切な対策——特に「栄養」「運動」そして「社会参加」——を行うことで、その進行を食い止め、改善できる可能性があるからです。

今回は、意外と知られていない「身体の弱り」と「脳の弱り」の深い関係と、今日からできる対策について、専門用語を噛み砕いて徹底解説します。

1. そもそも「フレイル」とは?

まず、基本をおさらいしましょう。 フレイルとは、わかりやすく言えば**「健康な状態」と「介護が必要な状態」の中間**のことです。

加齢に伴い、筋力や心身の活力が低下し、ストレスに対する回復力が弱まっている状態を指します。しかし、ここは非常に重要なポイントですが、**フレイルは「可逆的(かぎゃくてき)」**です。つまり、早めに気づいて対策をすれば、健康な状態に戻ることができます。

フレイルの基準(日本版)

専門的には「J-CHS基準(改訂版)」などが用いられますが、中学生でもわかるように簡易チェックリストにしました。以下の3つ以上が当てはまるとフレイルの可能性があります。

  1. 体重減少: 6ヶ月で2〜3kg以上、意図せず体重が減った。
  2. 筋力低下: ペットボトルのキャップが開けにくくなった、握力が落ちた。
  3. 疲労感: 「わけもなく疲れた」と感じることが増えた。
  4. 歩行速度: 横断歩道を青信号のうちに渡りきれない。
  5. 活動低下: 軽い運動や体操を週に1回もしていない。

2. 結論:フレイルと認知症は「負の連鎖」を起こす

ここからが本題です。 身体的な衰え(身体的フレイル)と、脳の衰え(認知機能の低下・認知的フレイル)は、別々の問題ではなく、コインの裏表のような関係にあります。

理由:なぜ相互に影響するのか?

① 身体的フレイル → 認知症への入り口 筋肉が減り(サルコペニア)、体が動かしにくくなると、外出がおっくうになります。 家の中に閉じこもると、人との会話が減り、外の景色を見るなどの「脳への刺激」が激減します。脳を使わない状態が続けば、当然、認知機能は低下しやすくなります。 事実、身体的フレイルの人は、そうでない人に比べて認知症になるリスクが高いという研究データが数多く存在します。

② 認知機能低下 → 身体的フレイルの加速 逆に、物忘れが増えたり、意欲が低下したり(アパシーといいます)すると、「運動しよう」「バランスの良い食事を作ろう」という気力が湧かなくなります。 食事の管理ができなくなれば低栄養になり、筋肉はさらに痩せ細ります。これが身体的フレイルを加速させます。

この**「動かないからボケる、ボケるから動かない」というスパイラル**こそが、最も避けるべき事態なのです。

3. データで見る「コグニティブ・フレイル」

この「身体」と「認知」の両方が弱っている状態を、専門用語で**「コグニティブ・フレイル(認知的フレイル)」**と呼びます。

国立長寿医療研究センターの研究(※1)によると、身体的にフレイルであり、かつ認知機能も低下している(コグニティブ・フレイル)高齢者は、健康な高齢者に比べて、要介護状態になるリスクや死亡リスクが数倍に跳ね上がることが示唆されています。

単なる「筋力不足」や単なる「物忘れ」よりも、両方が合わさった時が一番危険なのです。

4. 解決策:鍵を握るのは「社会参加」

では、どうすればこの悪循環を断ち切れるのでしょうか? 従来の「食事(タンパク質摂取)」と「運動」はもちろん重要です。しかし、最新の知見で最も注目されているのが**「社会参加」**です。

なぜ社会参加が効くのか?

社会参加とは、趣味の集まり、ボランティア、地域のサークル、あるいは私のように薬局で誰かと話すことでも構いません。

  • 役割を持つ: 「誰かの役に立っている」という感覚は、精神的な張り合いを生みます。
  • 複合タスク: 人と話しながら歩く、段取りを考えて活動する。これらは「デュアルタスク(二重課題)」と呼ばれ、脳と身体を同時に鍛える最強のトレーニングです。

例えば、「一人で黙々とウォーキングをする」よりも、「友人と会話をしながらウォーキングをする」ほうが、認知症予防効果が高いことがわかっています。

5. 今日からできる具体的なアクションプラン

今日から、ご自身やご家族のためにできることを3つ提案します。

  1. 「指輪っかテスト」で筋肉チェック 両手の親指と人差し指で輪っかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲んでみてください。指が重なる、あるいは隙間ができるほど細くなっている場合は「サルコペニア(筋肉減少)」の危険信号です。
  2. タンパク質を「プラス1品」 朝食のパンとコーヒーに、ゆで卵かヨーグルトを1つ足してください。筋肉の材料はタンパク質です。高齢者は若い頃よりも多くのタンパク質が必要です。
  3. 「今日、誰と話したか」を確認する 家族以外の人と話す機会を作ってください。スーパーの店員さんへの挨拶でもOKです。外に出る理由を作ることが、フレイル対策の第一歩です。

まとめ

  • フレイル(身体の弱り)と認知症(脳の弱り)は互いに原因となり、悪化させ合う。
  • 両方が重なる「コグニティブ・フレイル」は特にリスクが高い。
  • 対策は「栄養」「運動」に加え、「人とのつながり(社会参加)」が最強の薬になる。

「最近、ちょっと弱ってきたかな?」と思ったら、それは年齢のせいだけではありません。回復可能な「フレイル」のサインかもしれません。 かかりつけの薬局や、地域包括支援センター(ケアマネジャーさんのいるところ)に気軽に相談してくださいね。

私たち薬剤師も、お薬の調整だけでなく、健康の相談役としていつでもお待ちしています。


出展・参考文献 ※1 国立長寿医療研究センター 「フレイルの進行予防」に関する研究報告より(一般的な知見に基づく記述です。

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