家族必見!認知症の初期サイン10選と早期発見・対応のポイント

生活支援

はじめに:ただの物忘れ?それとも認知症?

「最近、親の物忘れがひどくなった気がする」 「同じことを何度も聞いてくるけれど、ただの年のせい?」

薬局の窓口で、ご家族からこのようなご相談をよく受けます。大切な家族の変化に戸惑い、不安を感じるのは当然のことです。

実は、加齢による自然な物忘れと、認知症による記憶障害は明確に異なります。加齢による物忘れは「朝ごはんに何を食べたか」という出来事の「一部」を忘れるだけですが、認知症の場合は「朝ごはんを食べた事実そのもの」を完全に忘れてしまいます。ヒントを出しても思い出すことができません。

日本の高齢化に伴い、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されています。決して他人事ではなく、どの家庭でも起こり得る身近な問題なのです。

今回は、20年間現場で多くの患者さんと接してきた現役薬剤師の視点から、家族が日常生活の中で気づきやすい「認知症の初期サイン10選」を具体例とともに解説します。

家族が気づくべき認知症の初期サイン10選

日常生活の中で「あれ?いつもと違うな」と感じる些細な違和感こそが、早期発見の重要なカギとなります。10のサインを具体的に見ていきましょう。

1. 直近の出来事を忘れる

  • 結論:数時間前や昨日の出来事をすっぽり忘れ、同じ質問を何度も繰り返します。
  • 理由:脳の記憶を保管する場所(海馬)がダメージを受け、新しい情報を記憶に留めておくことができなくなるためです。
  • 事例:「さっきお昼ご飯食べたかしら?」と1時間ごとに聞いてくる。薬局でも「今朝もらった薬をどこに置いたかわからない」と何度も電話をかけてこられる患者さんが多くいらっしゃいます。

2. 慣れた場所で道に迷う

  • 結論:長年住んでいる自宅の近所や、通い慣れたスーパーの帰りに道に迷うようになります。
  • 理由:脳が、自分が今どこにいるのか、周囲のものとどういう位置関係にあるのかを把握する力(空間認知機能)が低下してしまうからです。
  • 事例:毎日通っているはずの散歩コースで帰り道がわからなくなったり、駅の改札を出た瞬間に自宅の方向が思い出せず立ちすくんでしまうケースがあります。

3. 言葉がうまく出てこない

  • 結論:物の名前がスッと出てこなくなり、「あれ」「それ」で済ませることが急激に増えます。
  • 理由:頭の中にある言葉の引き出しから、適切な単語を見つけ出す機能がうまく働かなくなるためです。アルツハイマー型認知症の初期によく見られます。
  • 事例:テレビのリモコンを指して「あの四角くて黒いやつ取って」と言ったり、長年の友人の名前が突然思い出せなくなったりします。

4. 物の置き忘れやしまい忘れが増える

  • 結論:財布や鍵などを置いた場所を忘れるだけでなく、常識では考えられない場所に物を放置してしまいます。
  • 理由:記憶の低下に加え、無意識のうちに不適切な行動をとってしまう脳の混乱が重なるためです。
  • 事例:冷蔵庫の野菜室に財布が入っていたり、洗濯機の中に携帯電話をしまってしまったりする事案が目立ちます。

5. 計算やお金の管理が難しくなる

  • 結論:簡単な計算に時間がかかり、レジでの支払いや家計のやりくりが困難になります。
  • 理由:複数の情報を整理して順序立てて処理する力(実行機能)が衰えるため、数字の計算や段取りが苦手になるからです。
  • 事例:小銭の計算ができず、毎回1万円札で支払うため財布の中が小銭でパンパンになっている。または、すでに支払った公共料金の請求書を持って何度も郵便局へ行ってしまうことなどが挙げられます。

6. 予定や約束を忘れる

  • 結論:カレンダーに予定を書き込んでも、その予定自体を忘れてしまいます。
  • 理由:新しい出来事を記憶できないため、未来の約束を自分の予定として認識し続けることが難しくなります。
  • 事例:病院の予約日を忘れ、クリニックから確認の電話が来る。家族で外食に行く約束をしたのに、迎えに行くとパジャマのままで全く覚えていないという事態が起こります。

7. 判断力が低下する

  • 結論:これまでなら絶対にしなかったような、金銭的・社会的に不合理な行動をとるようになります。
  • 理由:物事の善悪や危険を予測する力(社会的判断力)が低下し、生活の安全を守る力が弱まるためです。
  • 事例:訪問販売で高額な羽毛布団を突然契約してしまう。スーパーで毎日同じ納豆や卵を買い込み、冷蔵庫が同じ食品で溢れかえっているなどの行動が見られます。

8. 服装や身だしなみへの関心が薄れる

  • 結論:季節感のない服装をしたり、入浴や着替えを面倒くさがったりするようになります。
  • 理由:物事を計画して実行する意欲が低下し、自分を客観的に見る力が失われていくからです。
  • 事例:真夏に厚手のセーターを着て外出する。上下ちぐはぐな服を着たり、お風呂に何日も入らなくても気にしなくなったりします。

9. 趣味や交流への興味が薄れる

  • 結論:これまで楽しみにしていた趣味や、友人との集まりに全く参加しなくなります。
  • 理由:脳の働きが低下することで自発的な意欲が失われ、無気力状態に陥りやすくなるためです。うつ症状と間違われることもあります。
  • 事例:毎週通っていた囲碁将棋クラブや、熱心に参加していた地域のボランティア活動に「疲れた」「面倒だ」と言って行かなくなってしまいます。

10. 感情の起伏が激しくなる

  • 結論:ちょっとしたことで激しく怒ったり、逆に突然泣き出したりと、感情のコントロールが効かなくなります。
  • 理由:脳の前頭葉という感情を抑え込むストッパーの役割を果たす部分が、うまく機能しなくなるためです。
  • 事例:探し物が見つからない時に「あなたが盗んだんでしょ!」と家族を激しく責め立てる(もの盗られ妄想)。または、テレビを見て不自然に大声で笑い続けるなどの変化が現れます。

早期発見のために家族ができること・相談窓口

認知症の初期段階では、ご本人も「何かがおかしい」と薄々気づき、不安を抱えていることが多いです。しかし、プライドや恐怖心からそれを取り繕おうとし、家族も「ただの年のせい」と思い込もうとして発見が遅れがちです。

上記のようなサインが複数見られるようになったら、決して本人を強く問い詰めず、早めに専門機関へ相談することが重要です。

【どこへ相談すればいい?】 まずは、各市町村に設置されている地域包括支援センターに相談しましょう。ここは高齢者の生活を支える総合相談窓口であり、専門の保健師や社会福祉士などが無料で相談に乗ってくれます(多くは市役所や介護施設に併設されています)。

その後、必要に応じて医療機関(物忘れ外来、精神科、脳神経内科など)を受診します。医療機関では以下のような検査が行われます。

  • 簡易認知機能検査:長谷川式認知症スケールやMMSEといった質問形式のテストを行います。
  • 画像検査・血液検査:MRIなどで脳の萎縮を確認したり、血液検査で甲状腺機能低下症など「治る可能性のある認知症(または似た症状の病気)」ではないかを除外したりします。

介護家族におすすめのサポートグッズ紹介

ご家族の負担を少しでも減らし、安全を守るために、便利なツールを活用するのも非常に有効な手段です。

【ご提案アイテム:服薬支援カレンダー & 見守りGPSタグ】

  • 服薬支援カレンダー(お薬カレンダー) 「薬を飲んだか忘れてしまう」「重複して飲んでしまう」というトラブルを防ぐため、1日分・1回分ずつ薬をセットできる壁掛けカレンダーです。薬剤師の目線からも、飲み忘れ防止の第一歩として強く推奨します。最近では、時間が来るとアラームで知らせてくれる便利な電子ケースもあります。
  • 見守りGPS(スマートタグ) 道に迷う心配が出始めた方に。キーホルダー型や靴に忍ばせることができる小型のGPS端末(Apple AirTagなど)を持たせておくと、万が一外出先で迷子になっても、ご家族のスマートフォンから居場所を確認でき、大きな安心に繋がります。

まとめ

今回ご紹介した「10の初期サイン」は、ご家族が日常生活の小さな変化に気づくための重要な指標です。

認知症は早期に発見し、適切な対応や治療を始めることで、進行を緩やかにし、ご本人が住み慣れた地域で自分らしく生活できる期間を長く保つことが可能です。

「もしかして?」と思ったら、一人で抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネージャー、そして私たち地域の薬剤師を頼ってください。多職種が連携して、あなたとご家族を全力でサポートします。


出典:厚生労働省「認知症施策の総合的な推進について(2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると推計)」

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