認知症の種類と特徴|アルツハイマーだけじゃない!症状別対応ガイド

生活支援

はじめに

「最近、物忘れがひどいけれど、歳のせいかしら?」

「いないはずの人や虫が見えると言い出して、どう対応していいかわからない」

ご家族のこうした変化に戸惑っていませんか?

認知症=アルツハイマー型と思われがちですが、実は認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ**「原因」「症状の出方」「効く薬」「適切な接し方」**が異なります。

相手の行動の「理由」がわかれば、介護のイライラや不安は確実に減らすことができます。今回は、主要な認知症の種類と、今日からできる具体的な対応策について、薬剤師の視点からわかりやすく解説します。


認知症の4大種類と全体像

まずは全体像を把握しましょう。認知症の約9割は、以下の4つのタイプに分類されます。

認知症の種類割合主な特徴(ご家族が気づきやすいサイン)
アルツハイマー型67.6%新しいことを忘れる、日時がわからなくなる
血管性19.5%良い時と悪い時の波がある、手足の麻痺
レビー小体型4.3%幻視(いないものが見える)、動作が遅くなる
前頭側頭型1.0%性格が変わる、同じ行動を繰り返す
その他7.6%治る可能性のある認知症も含む

※割合は厚生労働省等の調査に基づく一般的な目安です。

ここからは、それぞれのタイプについて詳しく見ていきましょう。


1. アルツハイマー型認知症:最も多い「記憶の病」

どんな病気?

脳の中に「アミロイドベータ」などの異常なタンパク質が溜まり、神経細胞が壊れて脳が縮んでいく病気です。特に「海馬(かいば)」という記憶の司令塔が最初にダメージを受けます。

家族が気づくサイン(症状)

  • 新しいことが覚えられない(記銘障害):昔のことはよく覚えているのに、「さっきご飯を食べたこと」自体を忘れます。「ご飯はまだ?」と何度も聞くのはこのためです。
  • 日時や場所がわからない(見当識障害):「今日は何月何日?」「ここはどこ?」がわからなくなります。
  • 取り繕い(とりつくろい):わからないことを悟られないように、「ああ、あれね」と話を合わせることがあります。これは自尊心の表れでもあります。

診断と治療薬

MRI検査で海馬の萎縮を確認します。

薬は、脳内の神経伝達物質(脳のガソリンのようなもの)を増やす「ドネペジル」などのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬や、神経の興奮を調整する「メマンチン」などが使われます。これらは完治させるものではありませんが、進行を緩やかにし、ご本人が自分らしく過ごせる時間を延ばすために重要です。

ご家族へのアドバイス:否定せず「安心」を

最も大切なのは**「否定しないこと」**です。

「さっき食べたでしょ!」と言いたくなりますが、本人にとっては「食べていない」のが事実です。「お茶が入りましたよ」と話題を変えたり、カレンダーを一緒に見て確認するなど、自尊心を傷つけないサポートがBPSD(暴言や徘徊などの周辺症状)の予防につながります。


2. 血管性認知症:脳卒中が引き金になる

どんな病気?

脳梗塞や脳出血など、脳の血管のトラブルによって脳細胞が死んでしまうことで起こります。糖尿病や高血圧などの生活習慣病が背景にあることが多いです。

特徴的な症状

  • まだら認知症:「できること」と「できないこと」がはっきりしています。記憶力は良いのに計算だけできない、といった状態です。
  • 階段状の進行:発作が起きるたびにガクンと症状が悪化し、その後しばらく安定する、という経過をたどることが多いです。
  • 感情失禁:急に泣き出したり、怒りっぽくなったりと、感情のコントロールが難しくなります。

治療と対応

最大の治療は**「再発予防」**です。血液をサラサラにする薬や、血圧・血糖値を下げる薬を飲み、生活習慣を整えることが進行防止の鍵です。

リハビリテーションも非常に有効です。身体機能の回復だけでなく、脳への刺激にもなります。


3. レビー小体型認知症:幻視とパーキンソン症状

どんな病気?

「α-シヌクレイン」というタンパク質が脳に溜まることで発症します。アルツハイマー型と間違われやすいですが、対応を間違えると症状が悪化することがあるため、正確な診断が重要です。

家族が驚くサイン(症状)

  • リアルな幻視:「部屋の隅に子供が座っている」「布団の上に虫がいる」など、具体的でリアルなものが見えます。本人には本当に見えているので、怖がります。
  • パーキンソン症状:手足が震える、動きが遅くなる、転びやすくなる、筋肉がこわばるといった症状が出ます。
  • 調子の波:1日の中で、頭がはっきりしている時と、ぼーっとしている時の差が激しいです。

薬の注意点

このタイプの方は、**薬に対して非常に敏感(薬剤過敏性)**です。一般的な認知症の薬や、興奮を抑える精神科の薬を使うと、かえって動きが悪くなったり、意識が朦朧としたりすることがあります。

薬の調整は「少量から慎重に」が鉄則です。医師や薬剤師に日々の様子を細かく伝えることが重要です。

ご家族へのアドバイス:幻視は「共有」して「退治」する

「何もいないじゃない!」と否定すると、本人は孤独感を深めます。「私には見えないけれど、あなたには見えて怖いのね」と共感し、「私が払ってあげるね」と手で払うふりをしてあげると、安心されることが多いです。

また、転倒リスクが高いため、室内の段差をなくすなどの環境整備も必須です。


4. 前頭側頭型認知症:性格が変わったように見える

どんな病気?

脳の前頭葉(理性や感情を司る)や側頭葉が萎縮します。比較的若い方(65歳未満)にも発症例が見られます。

特徴的な症状(記憶障害より行動変化が目立つ)

  • 脱抑制(だつよくせい):本能のブレーキが効かなくなります。万引きをする、列に割り込む、理不尽に怒鳴るなど、社会的なルールが守れなくなることがあります。
  • 常同行動(じょうどうこうどう):毎日同じ時間に同じコースを歩く、同じものばかり食べるなど、こだわりの行動を繰り返します。

ご家族へのアドバイス

介護負担が精神的に最も大きいタイプの一つです。「わざとやっているわけではない、病気のせいだ」と頭ではわかっていても、家族は傷つきます。

根本的な治療薬はありませんが、行動を落ち着かせる薬を使うことがあります。また、「同じ行動をする」という特徴を逆手に取り、安全なルーティン(日課)を作って生活リズムを整えるケアが有効です。


5. その他の認知症(治る可能性のあるもの)

中には、手術や治療で改善する認知症もあります。

  • 正常圧水頭症: 脳に水が溜まる。歩行障害、尿失禁が特徴。手術で劇的に良くなることがあります。
  • 慢性硬膜下血腫: 頭を打った後、じわじわ出血が溜まる。これも手術で治ります。
  • 甲状腺機能低下症・ビタミン不足など

「おかしいな」と思ったら、自己判断せず、必ず専門医を受診して原因を突き止めることが大切です。


まとめ:早期発見が、家族の笑顔を守る

認知症は「何もわからなくなる病気」ではありません。

感情は最期まで残ります。「嬉しい」「安心できる」「怖い」「悲しい」といった気持ちは、私たちと同じように感じています。

【ポイントの振り返り】

  1. アルツハイマー型: 記憶の障害。「否定せず、安心させる」
  2. 血管性: 生活習慣病の管理。「再発予防とリハビリ」
  3. レビー小体型: 幻視と転倒。「否定せず共感、薬は慎重に」
  4. 前頭側頭型: 行動の変化。「環境調整と、介護者の心のケア」

早期にタイプを知ることで、進行を遅らせる薬を使ったり、生活環境を整えたりする準備ができます。それは結果として、ご本人の不安を取り除き、ご家族の介護負担を減らすことにつながります。

一人で抱え込まず、医師、薬剤師、ケアマネージャーなどの専門家チームを頼ってくださいね。


【出典・参考文献】

  • 厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」研究班 報告書
  • 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
  • 各製薬会社 添付文書(ドネペジル、メマンチン等)
  • 執筆日:2025年8月17日

【免責事項】

本記事は一般的な医学情報に基づき作成されていますが、個々の症状や診断を確定するものではありません。具体的な診断や治療については、必ず医師にご相談ください。

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