調剤薬局で管理栄養士として働く中、「薬剤師とどう連携すればいいのか分からない」「自分の役割がはっきりしない」と悩む声をよく聞きます。
一方で、薬剤師の視点から見ても、管理栄養士がいることで患者対応の幅が広がったと感じる場面が増えています。
本記事では、薬剤師から見た管理栄養士の役割や価値を交えながら、実際の連携事例と、よりよいチーム医療の実践方法について解説します。
目次
- なぜ薬局に管理栄養士が必要なのか
- 薬剤師が感じている管理栄養士の存在意義
- 実践例①:糖尿病患者の服薬支援と食事指導
- 実践例②:ポリファーマシーと低栄養への対応
- 実践例③:在宅患者へのチーム連携支援
- 薬剤師との連携を深める3つのヒント
- まとめ:薬局内で信頼される管理栄養士へ
なぜ薬局に管理栄養士が必要なのか

生活習慣病、低栄養、フレイル──。これらの症状に対応するには、薬だけでは不十分であり、「食事」と「栄養」の専門的なアプローチが不可欠です。
特に近年、服薬の効果を最大化するには生活習慣の見直しが必要という認識が広がり、薬局における管理栄養士の役割が注目されるようになりました。
患者さんの栄養状態は、薬の吸収・効果・副作用リスクにも大きく影響します。 だからこそ、薬剤師だけでは拾いきれない部分を、管理栄養士がサポートできるのです。
薬剤師が感じている管理栄養士の存在意義
現場の薬剤師に話を聞くと、管理栄養士の存在について、次のような声が上がります。
- 「患者さんの食事や栄養の話になると自信がない。専門職がいると安心」
- 「服薬アドヒアランスが悪い方の背景に、栄養や食生活の課題があると感じていた」
- 「高齢者の体重減少に気づいても、何を提案すればいいか分からなかった」
つまり薬剤師も、“薬”の枠を超えた支援が必要だと感じているのです。 そこに、管理栄養士の介入があると、チームとしてより安心できる体制が整います。
ただし、「何を頼んでいいかわからない」という本音もあります。 だからこそ、管理栄養士から“声をかけること”が、連携の第一歩となるのです。
実践例①:糖尿病患者の服薬支援と食事指導
薬剤師が気づいた「異変」から連携が生まれるケースがあります。
ある糖尿病患者さん(60代・女性)は、SGLT2阻害薬を服用中。 薬剤師が体重の急激な減少に気づき、管理栄養士に相談しました。
管理栄養士が聞き取りを行ったところ、朝食をほとんど摂っていないことが判明。 糖質制限を過度に意識しすぎており、たんぱく質や脂質も不足していたのです。
ヨーグルト+きな粉、ゆで卵などを朝食に加える提案を行い、栄養状態が改善。 その後、主治医と連携し、薬の用量調整にもつながりました。
薬剤師は「管理栄養士が入ってくれて安心した」とコメント。 “薬と栄養の両輪”で支えることの重要性を実感したそうです。
実践例②:ポリファーマシーと低栄養への対応
多剤併用(ポリファーマシー)により、食欲低下や栄養不足をきたす高齢者も多くいます。
ある80代男性は、複数の薬を服用中で、薬剤師が「最近食が細くなった」と気づきました。
管理栄養士が関わることで、食事の嚥下状況や味の好み、食欲を刺激する時間帯などが整理され、 家族とも連携して無理のない食事支援が始まりました。
薬剤師にとっては「副作用か、加齢か、栄養状態か」の判断がつきにくい場合もあります。 管理栄養士が“生活者目線”で介入することで、根本的な原因へのアプローチが可能になるのです。
実践例③:在宅患者へのチーム連携支援
訪問服薬管理を行う薬剤師から、「栄養補助食品を使っているが、家族が戸惑っている」と管理栄養士へ相談がありました。
管理栄養士が同行訪問し、食品の選び方・活用方法・誤嚥予防のポイントを説明。 その後、訪問看護師やケアマネジャーとも連携し、栄養ケア計画に反映されました。
薬剤師は「自分だけでは対応しきれなかった内容に、専門職が入ってくれて助かった」と話しており、 管理栄養士の“調整力”がチームに安心感をもたらしたケースです。
薬剤師との連携を深める3つのヒント

- 薬剤師の「困りごと」に耳を傾ける
「最近あの方、体重減ってるかも」など、観察の中にヒントがあります。 - 短く、具体的な情報共有を意識
報告は長文より箇条書きで。「○○が減っている傾向あり」「△△の提案を検討中」など明確に。 - 日常の雑談から関係構築
いきなり「連携」と意気込まず、「最近どう?」の一言から信頼関係は始まります。
まとめ:薬局内で信頼される管理栄養士へ
薬剤師は、管理栄養士の力を必要としています。 薬の知識だけでは補いきれない“生活者の課題”に、栄養の視点から伴走できる存在だからです。
ただ待っているだけでは、関係性は生まれません。 まずは自分から、薬剤師の悩みや気づきに耳を傾け、必要な支援を届けていくこと。
その積み重ねが、「この薬局に栄養士がいてくれて助かる」という信頼を育みます。
薬と栄養の橋渡し役として、管理栄養士がチーム医療の要になる未来は、すぐそこにあります。
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