お薬手帳や薬品情報書を見ていて、「う~ん、これいったい何の薬?」と思う事ありませんか?
薬の名前には、効能ごとに一定の「法則」があります。
薬の名前の語尾に注目すると、その法則が使われています。
医療用の薬は約15,000種類、医療現場で使うことが出来るようになっています。
その1つ1つを覚えるよりも、薬の名前の法則からパターンで覚えた方が、効率が良いでしょう。
この薬の語尾がこうなので、○○の薬だ!みたいな。
- 薬の名前を見て、とりあえず何の薬か知りたい人向け
- 忙しい介護職の方向け
- 市民へ栄養指導をする管理栄養士さん向け
- 調剤室で集薬しているアシスタント(医療事務)さん向け
- 薬を勉強している薬学生向け
今回の話は、薬のこまごました作用機序や副作用とか、とりあえずどうでもいいです。
名前見ただけで、ひとこと「○○の薬」と言えるようになれたらいいんです。
この記事を読むと、以下の通りになれます。
・薬の名前の法則が分かる
・薬の名前から何の薬かある程度、類推できる(わかる!)
・いちいち、薬の辞書で調べる時間を省くことができる
・ぱっと何の薬なのか言えて、「かっこいい!」と思われる人になれる
お断りをいくつか。
あくまで法則なので、完全ではありません。「ある程度、類推できる」スタンスで受け止めていただくとありがたいです。先発医薬品や合剤には使えません。
また、1つの薬でも、複数の効能(適応)を持っている場合もあります。今回、紹介する法則は、いくつかの適応の中から使用頻度が多い効能を1つ紹介します。患者さんによっては、別の適応で使用されている場合もありますので、効能の正確性を保証するものではありません。正確に把握したいなら、患者様にヒアリングするか、客観的な別の情報をもとに判断が必要になります。今回はざっくり、「○○の薬」と独り言で言える程度、または一番最初に頭に浮かべてほしい薬効で紹介しています。
細かい系統や分類はあえてせずに、「○○の薬」とざっくりまとめています。薬剤師からするとツッコミどころ満載です。また、すべての成分を紹介していません。筆者が臨床上で良く見る薬を紹介しています。
医療用医薬品に限定しています(お薬手帳によく貼ってある薬です)。市販薬は考慮していません。
法則①「~ジピン」「~サルタン」「~プリル」「~ロール」
まずは「血圧の薬」を思い浮かべましょう!
血圧の薬とは、「血圧を下げる作用」があります。血圧を下げることで、「脳卒中」「心筋梗塞」など大きな合併症を発生させないようにするのが目的です。
「~ジピン」「~サルタン」「~プリル」「~ロール」ときたら血圧の薬として使われている場合が多いです。
アムロジピン ニフェジピン シルニジピン アゼルニジピン
カンデサルタン オルメサルタン バルサルタン アジルサルタン テルミサルタン
エナラプリル カプトプリル イミダプリル リシノプリル
カルベジロール ビソプロロール アテノロール プロプラノロール メトプロロール
「~ジピン」は血圧を下げる以外にも、心臓の負担を和らげたりするので「狭心症」の薬として使用される場合があります。「~サルタン」や「~プリル」は腎臓や心臓の保護作用があったりします。「~ロール」は降圧作用の他にも、心不全や不整脈の薬として使われることもあります。この辺は、患者さんからの聞き取りや他に処方されている薬で判断できます。
特に、単独で使用されている場合、血圧の薬の可能性が高いです。
法則②名前のどこかに「グリ」がある
血糖を下げる糖尿病治療薬です、間違いなく。
血糖を下げる目的は、合併症を防ぐことです。血糖が高いと、「糖尿病性網膜症」による失明、手足のしびれなどの「神経障害」、腎臓を破壊する「糖尿病性腎症」、他にも「感染症」「足壊疽」などの合併症を起こします。それらの発症を防ぐために血糖を下げるのです。
グリメピリド グリクラジド グリベンクラミド
ナテグリニド ミチグリニド レパグリニド
シダグリプチン ビルダグリプチン テネグリプチン リナグリプチン
ピオグリタゾン
他にも「グリ」はつかない血糖降下薬はいろいろあります。
名前に法則性があるので以下、紹介します。
ボグリボース アカルボース
メトホルミン
法則③「~スタチン」「~フィブラート」
「脂質異常症用の薬」です。コレステロール値や中性脂肪を下げます。
なぜ、下げる必要があるかというと、高いと動脈硬化症を起こしやすくなるからです。
アトルバスタチン ロスバスタチン プラバスタチン ピタバスタチン フルバスタチン シンバスタチン ベザフィブラート フェノフィブラート ベマフィブラート
法則④「セフ~」「~マイシン」「~キサシン」「~サイクリン」
「抗菌薬」でまとめています。
抗菌薬は作用の仕方によって細かい分類がありますが、ここではざっくり「抗菌薬」です。
セフカペンピボキシル セフジトレンピボキシル セフジニル
クラリスロマイシン アジスロマイシン エリスロマイシン クリンダマイシン
レボフロキサシン オフロキサシン シプロフロキサシン
ミノサイクリン
抗菌薬は自己中止が良くありません。飲んだり飲まなかったりすると、耐性菌が発現しうるからです。処方されたら、飲み切ることが原則です。
マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどと相互作用して、効果がなくなる抗菌薬があります。マグネシウムは胃薬や下剤、カルシウムは骨粗鬆症治療薬、アルミニウムは市販の胃薬に含まれていることが多いです。これらは2時間以上間隔をあければ、抗菌薬と服用可能です。
セフジニル
レボフロキサシン オフロキサシン シプロフロキサシン
ミノサイクリン など
法則⑤「~ドロン」
「骨粗鬆症」の薬です。
アレンドロン酸錠 リセドロンNa錠 ミノドロン酸錠
飲み方に特徴があります。
服用後は、30分間横にならない(錠剤が食道に引っかかって、炎症を起こすから)。
服用後は、30分間水以外の飲食を控える(間隔をあけないと、食事と影響して効果がなくなるから)。
1錠の量によって、週1回服用のタイプと月1回服用のタイプがある。
法則⑥「~ゾラム」「~ゼパム」
「睡眠剤」として使われたり「安定剤」として使われたりします。
安定剤は寝る前なら睡眠剤として、日中(1日2~3回)なら安定剤として使われていると考えて良いでしょう。
安定剤とは、「気持ちを落ち着かせる作用」があります。興奮やうつに使われたり、不定愁訴(原因はよく分からないけど、気持ちがつらい症状)に使用される薬です。
ゾルピデム エチゾラム トリアゾラム
ブロチゾラム ロルメタゾラム フルニトラゼパム エスタゾラム ニトラゼパム
クアゼパム
エチゾラム クロチアゼパム ロラゼパム アルプラゾラム ジアゼパム ロフラゼプ酸エチル
ジェネリック医薬品と先発医薬品の違い(医薬品名)
「ジェネリック医薬品」をよく耳にすることがあると思います。日本語に直すと「後発医薬品」。
「後発」とあるので、「先発」医薬品もあるのかというと、あります。
医薬品が初めて世の中に出てくる際、「先発医薬品」として発売されます。数年を経てその薬の持つ「特許」が切れると、他の製薬企業も同じ成分の薬を製造することが出来るようになります。その特許が切れて、その成分を他の製薬企業が作った薬を「ジェネリック」と言います。
ジェネリック医薬品の名前の付け方には法則があります。
成分名+メーカー名
例えば、アムロジピン錠5㎎「サワイ」という薬。
「アムロジピン錠5㎎」が「成分名」。
「サワイ」が「製薬メーカー名」です。
基本的にジェネリック医薬品の成分名はどの製薬メーカーが作っても「アムロジピン」と表記します。
ここでフォーカスしている語尾とは成分名アムロジピンの「ジピン」という箇所。
ここに何の薬なのか、法則があるわけなんですね。
ちなみに、先発医薬品の場合、アムロジピンは「ノルバスク錠5㎎」や「アムロジン錠5㎎」という名称です。先発品は上記の法則が当てはまりません。語尾に共通のワードがないんですね。
先発医薬品だと、名称から何の薬か判断するのは難しいです。パターンがないので。
近年、ジェネリック医薬品の使用率は8割近くあります。処方される医薬品の多くをジェネリックで占められている現実を考えると、上記の法則で薬の効能が類推できるというわけなんですね!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
薬の名前のパターンから何の薬か、ある程度判断できたでしょうか。
今回紹介した法則はジェネリック医薬品のみ適応できる、と理解いただきたいです。
ここで紹介できなかった薬の語尾は他にもいろいろあります。今回はこれでもほんの一部。
薬を1つ1つ覚えるというよりは、薬の語尾のパターンを覚えて、「この薬は○○の薬です」と言えたら、かっこいいし、効率的だと思います。
ぜひ、一度試していただき、役に立ったら、幸いです。
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