「最近、おじいちゃんが家の中でよくつまずくようになった」 「認知症が進んでから、転ぶ回数が増えて心配」
そんな悩みをお持ちではありませんか? 実は、高齢者の転倒は、単なる筋力低下や不注意だけが原因ではありません。今飲んでいる「薬」が、転倒のリスクを跳ね上げている可能性があるのです。
今回は、薬剤師の視点から「薬と転倒の関係」を、そしてケアマネージャーの視点も交えて「生活環境の改善」について、徹底解説します。
1. なぜ高齢者の転倒は怖いのか?

結論: 転倒は、高齢者が「要介護状態」になる主要な原因の一つです。たかが転倒と侮ってはいけません。
理由: 高齢者の骨はもろくなっていることが多く、一度の転倒で「大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折)」を起こしやすいからです。これを機に手術・入院となると、ベッド上の生活が続き、一気に認知症が進行したり、筋力が衰えて寝たきりになったりするリスクがあります。
数字・事例: 内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、65歳以上の要介護者等が介護が必要となった主な原因の**第4位が「骨折・転倒(13.0%)」**です。 さらに、私が薬局で担当した80代の男性の事例ですが、夜トイレに行く際にふらついて転倒し骨折。その後、入院中に認知機能が低下し、自宅復帰が困難になってしまったというケースがありました。これは決して珍しい話ではありません。
2. その「ふらつき」、実は薬のせいかも?(薬剤師の視点)
結論: 5種類以上の薬を飲んでいる高齢者は、転倒のリスクが高まることが研究で分かっています(これを「ポリファーマシー」の問題と呼びます)。
理由: 薬の中には、副作用として「眠気」「ふらつき」「筋弛緩(筋肉が緩む)」「起立性低血圧(立ちくらみ)」を起こすものが数多く存在するからです。
詳しく解説: 特に注意が必要な薬のタイプを紹介します。
- 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)
- 作用: 不安を和らげたり、眠くさせたりする薬です。
- リスク: 「筋弛緩作用」といって、筋肉の緊張をほぐす働きがあります。これが強く出ると、足に力が入らず、カクンと膝が折れるように転倒してしまいます。また、翌朝まで眠気が残り、ボーッとして転ぶこともあります。
- 降圧薬(血圧を下げる薬)や糖尿病の薬
- 作用: 血圧を下げて、心臓や血管の病気を防ぎます。血糖値を下げて合併症を防ぎます
- リスク: 効きすぎると、急に立ち上がった時に脳への血流が維持できず、「立ちくらみ(起立性低血圧)」を起こして倒れてしまうことがあります。
血糖値を一時的に下げすぎて「低血糖(めまい、ふらつき、時に意識障害など)」を引き起こすこともあります。
- 痛み止め・アレルギーの薬
- リスク: 集中力を低下させたり、眠気を誘ったりすることで、注意力が散漫になり、障害物に気づかず転倒する原因になります。
判断が難しい: 個々の患者様が「どの薬で転倒したか」は、医師や薬剤師がお薬手帳と症状を照らし合わせない限り断定はできません。自己判断で薬を止めるのは一番危険ですので、必ず専門家に相談してください。

3. 認知症と転倒の深い関係
結論: 認知症の方は、そうでない方に比べて転倒リスクが格段に高いと言えます。
理由: 認知機能の低下により、周囲の状況を正しく認識する能力や、自分の身体能力を客観的に見る能力が低下するからです。
事例:
- 視空間認知の障害: 床にあるコードや段差が見えているのに、「高さ」や「距離」が正しくつかめず、足を引っ掛けてしまう。
- 注意障害: 一つのことに気を取られると(例:トイレに行きたい)、足元の障害物が目に入らなくなる。
- 判断力の低下: 本当は足腰が弱っているのに、「自分はまだ若くて元気に歩ける」と思い込み、介助なしで急いで歩こうとして転倒する。
4. ケアマネージャー視点!自宅でできる転倒予防(生活環境)
ここで、ケアマネージャーの視点を借りて、今日からできる「家の中の対策」を紹介します。
結論: 家の中の「動線」を見直し、転ぶ要素を物理的に排除することが最も効果的な予防策です。
具体的な対策リスト:
- 床に物を置かない(徹底的に!)
- 新聞紙、チラシ、座布団などは滑る原因です。
- 特に危険なのが「電気コード」。延長コードは壁に這わせるか、コードカバーを使いましょう。
- 照明の明るさを確保する
- 高齢になると、若者よりも明るさが必要です。
- 夜間のトイレまでの廊下に、人が通ると自動で点灯する「人感センサーライト」を設置するのが非常におすすめです。
- 履物の見直し
- スリッパは脱げやすく、すり足になりがちで危険です。かかとのある「ルームシューズ」や、滑り止めがついた靴下を選びましょう。
- 手すりの設置と福祉用具の活用
- 玄関、トイレ、浴室、廊下など、移動や立ち座りがある場所には手すりを。
- 介護保険を利用してレンタルや改修ができる場合があるので、ケアマネージャーに相談してください。
5. 薬剤師レンジからの提案:お薬レビューのすすめ

結論: 「最近転びやすくなったな」と思ったら、整形外科だけでなく、かかりつけ薬局にも相談してください。
理由: 薬の調整だけで、ふらつきが劇的に改善するケースがあるからです。
アクションプラン:
- お薬手帳を持参する: 複数の病院にかかっている場合、全部の薬を見せてください。飲み合わせでふらつきが出ていることもあります。
- 「いつ転びそうになるか」を伝える:
- 「朝起きたとき」なら睡眠薬の影響かも?
- 「立ち上がったとき」なら血圧の薬かも?
- 「食後」なら糖尿病の薬や食後低血圧かも? タイミングを伝えることで、薬剤師は原因の薬を特定しやすくなります。
6. まとめ

高齢者の転倒は、命に関わる重大な事故につながる可能性があります。しかし、その原因が「薬」や「環境」にある場合、適切な介入で防ぐことができます。
- 薬の副作用(ふらつき・眠気)を疑い、薬剤師に相談する。
- 家の中の段差やコードをなくし、明るくする。
- 認知症の特性(見えにくさ・注意不足)を理解して見守る。
私たち薬剤師やケアマネージャーは、薬を渡すだけ、プランを作るだけの存在ではありません。生活全体の安全を守るパートナーです。不安なことがあれば、いつでも「オレンジ色の薬剤師」にご相談ください。
【出典・参考文献】
- 日本老年医学会「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」
- 内閣府「令和4年版高齢社会白書」
- 消費者庁「高齢者の転倒・転落事故防止ガイド」
- 記事執筆日:2026年2月12日
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