認知症の薬は「アクセルとブレーキ」で覚える!中核症状治療薬4選と介護の注意点

「認知症の薬を飲み始めたら、かえって怒りっぽくなった気がする」 「お腹が緩くなって、トイレの介助が増えてしまった……」

医師から認知症のお薬(中核症状治療薬)を提案されたとき、ご家族や介護職の方の心には、期待と同時にこうした不安がよぎるものです。「副作用で本人が苦しむのではないか」「介護がさらに大変になるのではないか」と心配になるのは、あなたがそれだけ真剣に向き合っている証拠です。

現在、日本で認可されている認知症の進行抑制薬は、主に**「4種類」です。これらは決して魔法の薬ではありませんが、それぞれの「得意なこと(作用)」と「苦手なこと(副作用)」を正しく知ることで、「今の症状には合っていないかもしれない」「この変化は薬のせいかも」**と冷静に判断できるようになります。

この記事では、医学的なガイドラインに基づき、これら4つの薬の特徴と、介護の現場で気をつけるべきポイントをわかりやすく解説します。


1. 脳の働きを活発にする「アクセル役」の3剤

認知症(特にアルツハイマー型)では、脳内の情報を伝える「アセチルコリン」という物質が減ってしまいます。これを増やして、脳の神経活動を活発にするのが以下の3つの薬です。

共通する注意点(副作用): 脳を活性化させるため、人によっては**「興奮(怒りっぽくなる)」が出ることがあります。また、胃腸の動きも活発になるため、「吐き気・下痢・食欲低下」**が起きやすいのが特徴です。

① ドネペジル(代表的なお薬)

  • 特徴: 世界で最初に認可された薬で、最も広く使われています。アルツハイマー型だけでなく、幻視などが特徴の「レビー小体型認知症」にも保険適応があります。
  • 使える時期: 軽度から高度(重度)まで、すべての段階で使用可能です。
  • 介護の視点: 意欲向上に役立ちますが、攻撃性が強まる場合は医師への相談が必要です。

② ガランタミン

  • 特徴: ドネペジルと同様の働きをしますが、別の作用(受容体への直接作用)も併せ持ちます。
  • 使える時期: 軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に使われます。
  • 介護の視点: 飲み薬(錠剤・液剤)があります。ドネペジルが合わなかった場合に切り替えられることがあります。

③ リバスチグミン(唯一の貼り薬)

  • 特徴: 飲み薬ではなく、皮膚に貼る「パッチ剤」です。嚥下(飲み込み)が難しい方や、薬の拒否がある方に適しています。
  • 使える時期: 軽度から中等度のアルツハイマー型認知症に使われます。
  • 介護の視点: 飲み薬に比べて胃腸への負担は少ない傾向にありますが、貼った場所が**「かぶれる(痒くなる)」**ことがあります。背中や腕など、毎日貼る場所をローテーションして肌を守ることが大切です。

2. 過剰な興奮を抑える「ブレーキ役」の1剤

上記の3剤とは全く異なる仕組みで働く薬です。脳内の神経伝達物質(グルタミン酸)の過剰な働きを抑え、神経細胞を守ります。

④ メマンチン

  • 特徴: 気持ちの高ぶりを鎮める「ブレーキ」のような役割を果たします。
  • 期待できること: **「イライラして落ち着きがない」「大声を出す」**といった周辺症状(BPSD)を和らげる効果が期待されています。
  • 使える時期: 中等度から高度(重度)の方に使われます。
  • 併用について: 作用の仕組みが違うため、アクセル役の3剤(ドネペジルなど)のいずれかと一緒に使うことが可能です。
  • 介護の視点: 副作用として**「めまい」「眠気(ふらつき)」**が出ることがあるため、転倒リスクに注意が必要です。

まとめ:薬は「観察」とセットで活きる

これら4つの薬は、認知症を根本的に治すものではなく、進行を緩やかにしたり、症状を整えたりするためのものです。

  • 活動を高めたい → ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン
  • 気持ちを落ち着けたい → メマンチン

最も大切なのは、薬を飲んだ後の**「ご本人の変化」**です。「以前より笑顔が増えた」という良い変化もあれば、「怒りっぽくなった」「食欲が落ちた」というサインもあるでしょう。

介護者である皆さんが気づいたその変化こそが、医師が薬を調整する際の最も重要な手がかりになります。不安な変化があれば、遠慮なくメモをとって医師に伝えてください。それが、ご本人らしい穏やかな生活を守ることにつながります。


【参考文献・出典】 この記事は、以下の公的・専門的な資料に基づき記述しています。

  1. 一般社団法人 日本神経学会
    • 『認知症疾患診療ガイドライン2017』
    • 第4章 治療(薬物療法・非薬物療法)
  2. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiSearch/
    • 医療用医薬品 添付文書情報(ドネペジル塩酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、リバスチグミン、メマンチン塩酸塩)
  3. 厚生労働省
    • 「認知症施策の総合的な推進について」

記事作成日: 2026年2月8日 ※2023年に承認された新薬「レカネマブ(抗アミロイドβ抗体薬)」は、これら4剤とは異なる「疾患修飾薬」であり、投与対象や管理体制が厳密に定められています。本記事では、現在多くの医療機関で処方されている一般的な「症状改善薬(4剤)」について解説しました。

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