【薬剤師解説】ドネペジル(アリセプト)ってどんな薬?介護者が知っておきたい効果と副作用

認知症

「認知症と診断されて、初めて薬が出たけれど、本当に効くの?」 「この薬を飲み始めてから、なんだか怒りっぽくなった気がする……」

大切なご家族や利用者様がドネペジル(先発品名:アリセプト)を服用することになり、このような不安を抱えていませんか?

この記事では、現役の薬剤師が、ドネペジルに対するよくある疑問や不安に対し、介護の現場で役立つ実践的な視点から解説します。

疑問1:この薬を飲むと、認知症は治るのですか?

結論:ドネペジルは「治す薬」ではなく、「進行を緩やかにする薬」です。

多くのご家族が「この薬で以前のような元気な姿に戻れる」と期待されますが、残念ながら、一度失われた脳の神経細胞を元に戻すことは、現代の医学ではまだ難しいのが現状です。

ドネペジルの役割は、あくまで**「現状維持」「進行のスピードを遅らせる」こと。 もし、薬を飲み始めてから「症状が良くも悪くもなっていない(変わらない)」と感じるなら、それは「薬が効いている証拠(成功)」**と言えます。

【介護のポイント】

  • 「劇的な改善」ではなく、「穏やかな日々が一日でも長く続くこと」を目標にしましょう。
  • 「意欲が出てきた」「表情が明るくなった」といった小さな変化を見逃さないでください。ドネペジルは「意欲を高める」働きも期待されています。

疑問2:副作用で「怒りっぽくなる」って本当ですか?

回答:頻度は低いですが、一部の方で「易怒性(いどせい)」といって、怒りっぽくなったり興奮したりすることがあります。

ドネペジルは、脳内の神経伝達物質を増やして脳を活性化させます。この作用が良い方向に出れば「意欲の向上」になりますが、過剰に働いてしまうと「興奮」「攻撃性」として現れることがあります。

特に、もともと活動的でエネルギーがあるタイプの方や、前頭側頭型認知症(ピック病など)の傾向がある方の場合は注意が必要です。

【解決策:もし怒りっぽくなったら?】

  1. 開始時期との関連を確認する
    • 薬を飲み始めた時期、または量を増やした時期(3mgから5mgへ増量など)と、怒りっぽくなった時期が重なっていませんか?もし重なるなら、薬の影響である可能性が高いです。
  2. 主治医・薬剤師に相談する
    • 「最近、性格が変わったようで介護が大変」と正直に伝えてください。
    • **減量(5mg→3mg)**することで、認知機能への効果を保ちつつ、興奮だけが収まるケースも多々あります。
    • 決してご家族だけで悩まず、専門家に「薬の調整」を相談しましょう。

疑問3:吐き気や下痢が心配です。どうすればいいですか?

回答:飲み始めや増量時に、胃腸症状が出ることがあります。

ドネペジルは胃腸の動きを活発にする作用もあるため、副作用として下痢や吐き気が現れることがあります(数%程度)。

【解決策:胃腸トラブルを防ぐには?】

  • 食後に服用する: 空腹時よりも、食後に服用することで胃への負担が和らぎます。
  • 整腸剤などを併用する: 飲み始めの数週間だけ、胃薬や整腸剤を一緒に処方してもらうことも有効です。
  • 徐々に体を慣らす: 通常は3mgから開始し、1~2週間かけて5mgへ増量します。これは副作用が出ないかを確認するための「慣らし期間」です。もし3mgの段階で強い副作用が出た場合は、無理に増量せず医師に相談してください。

疑問4:薬が飲みにくい・飲み込んでくれない時は?

回答:ドネペジルには、高齢者でも飲みやすい様々な「形」が用意されています。

  • OD錠(口腔内崩壊錠): 口の中でサッと溶けるので、水なしでも飲めます。
  • ゼリー剤: 飲み込む力が弱い方に適しています。
  • ドライシロップ・細粒: 粉薬です。食事に混ぜたりすることも可能です(※ご本人への告知状況によるため、医師・薬剤師にご相談ください)。
  • 貼り薬(アリドネパッチなど): 飲み薬がどうしても難しい場合、背中などに貼るタイプもあります。貼ることで「薬を飲んだかどうかわからない」という飲み忘れ・飲みすぎの防止にもなります。

まとめ:介護者の皆様へ

ドネペジルは、アルツハイマー型認知症およびレビー小体型認知症の治療において、世界中で最も実績のある薬の一つです。

しかし、薬はあくまで「生活を支えるツール」の一つに過ぎません。副作用でご本人が辛い思いをしたり、介護されるご家族が疲弊してしまっては本末転倒です。

「なんだか様子がおかしいな」と思ったら、それは気のせいではありません。遠慮なく主治医や薬剤師に相談してください。お薬の量を調整したり、種類を変えたりすることで、ご本人もご家族も、もっと穏やかに過ごせるようになるかもしれません。


出典・参考文献

  • ドネペジル塩酸塩錠 添付文書(2026年1月改訂版)
  • 日本神経学会 監修『認知症疾患診療ガイドライン2017』医学書院(2017年)
  • 日本老年医学会 編集『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』(2015年)
  • 各製薬会社 ドネペジル適正使用ガイド

記事内で「ドネペジルは進行を緩やかにする薬」と解説しましたが、この本は「薬では治せない『生活のしづらさ』をどうカバーするか」のヒントが詰まっています。
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