初めて認知症と診断されて、ドネペジルを処方された患者様の介護者が心配そうに尋ねてきました。初めての認知症の薬。わかりやすくお伝えします。
この記事は初めてドネペジルを処方された患者様の介護者に向けて書きました
この記事を読むと以下のことが分かります。
ドネペジルを服用目的
効能と副作用
使い方
特徴
ドネペジルの服用目的
目的:認知症の進行を遅らせるために服用します
ドネペジルは「コリンエステラーゼ阻害薬」に分類されます。
何もしないと直線的に進行するのを緩やかにすることを期待して投与されます。
「治す」わけではなく、「進行を遅らせる」効果です。
服用したからと言って症状が消えるわけではありません。
ドネペジルの効能と副作用
ドネペジルは「中核症状治療薬」と呼ばれています。
中核症状とは、記憶障害、見当障害(時間、場所、ヒト)、判断力低下、理解力低下(失認・失行・失語)、実行機能障害などです。
効能:中核症状の進行を緩やかにします。
また、「賦活系」とか「アクセル系」の認知症治療薬と言われ、意欲が低下している患者さんの意欲を高める作用があると言われています。
アルツハイマー型認知症だけではなく、レビー小体型認知症に唯一の適応を持っています。
代表的な副作用は以下の通り
副作用
- 胃腸障害(下痢や吐き気)
- 易怒性(興奮)
胃腸障害が出たら、減量するか、中止するか、整腸薬や吐き気止めを併用して続ける場合あり。発生率は3%くらい。
易怒性が出たら、ほかに原因が見当たらない場合、減量か中止をします。発生率は1%未満。
稀ではあるが、不整脈や徐脈など引き起こす場合もあり、注意。発生率は1%未満。
ドネペジルの使い方
【アルツハイマー型認知症の場合】
初回はドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始します。3mgは有効量ではなく、副作用(主に胃腸障害)が出ないか、見るためです。
1~2週間後に5mg(有効量)に増量します。
高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量します。なお、症状により増やしたり減らしたりして良い。最大量は1日10㎎です。
【レビー小体型認知症の場合】
初回はドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始します。3mgは有効量ではなく、副作用(主に胃腸障害)が出ないか、見るためです。
1~2週間後に5mg(有効量)に増量します。
さらに4週間以上経過後、10㎎に増量します。症状によって5㎎まで減量してよい。最大量は1日10㎎までです。
初回服用から12週間の時点で、症状の改善度を評価して、継続の是非を検討します。
ドネペジルの特徴
- 剤型が豊富
- 認知症のすべての進行度に対応できる(軽度、中度、重度)
- アルツハイマー型認知症だけではなく、レビー小体型認知症に適応を持つ
●剤型が豊富
ドネペジルは多くの製薬会社からジェネリックとして発売されています。しかし、最も剤型を豊富に持つ製薬会社は先発医薬品アリセプトを扱うエーザイ株式会社です。
アリセプトは普通の錠剤、水なしでも服用できるD錠(口腔内崩壊錠)、ドライシロップ(粉)、細粒、ゼリータイプなど多種多様のラインナップをそろえています。
高齢者は錠剤を飲み込みにくい。飲み込む力が弱い。むせてしまう。といった場合はD錠やゼリータイプなど選択できる。特にレビー小体型認知症は嚥下困難をきたしている場合が多いので、剤型の豊富さはメリットです。最近は、アリセプトの貼り薬タイプも発売されました。アリドネパッチは貼ることで、視覚的に薬の使用を確認できます。胃腸障害も内服タイプに比べて少ないです。リバスチグミンパッチで対応できない高度の認知症にも使用できます。
●認知症のすべての進行度に対応できる(軽度、中度、高度)
中核症状治療薬はドネペジルの他にも、3種類存在します。
ガランタミンやリバスチグミンは軽~中程度の認知症。
メマンチンは中~高度の認知症
ドネペジルは軽度、中度、高度の認知症のすべてのステージに適応を持っている点が他の3つと異なります。
●アルツハイマー型認知症だけではなく、レビー小体型認知症に適応を持つ
ドネペジル以外の中核症状治療薬はレビー小体型認知症に適応がありません。
うつや意欲低下を伴うレビー小体型認知症に使用すると、意欲を引き出して介護介入しやすくなる場合があります。
ドネペジルについて思うところ
認知症の薬で、一番有名で最も使用されているドネペジル。
私自身もドネペジルを服用している患者を何人も見てきました。
私の経験からドネペジルへの印象は以下の通り。
進行を抑えているのかどうか評価は難しい。
暴力・暴言など興奮している患者への使用は避けた方がいい
●進行を抑えているのかどうか評価は難しい
同一人物で服用していない場合と比較することは出来ない。すでに服用しているから。
中核症状の記憶力、見当識、判断力、理解力、実行能力はドネペジルの服用があろうがなかろうが進行していく。それが早いか遅いかだけの話。治すわけでない。
進行を抑えているかどうか、わかりくいです。
一方、ドネペジルの服用意義の1つは、アクセル系と呼ばれる「意欲を高める力」だと思います。
認知症は「うつ」をしばしば合併します。レビー小体型認知症は特に多いです。
そういった患者の意欲を引き出すのに、ドネペジルは一役買う印象はあります。
意欲が高まれば、食事をとる意欲や体を動かす気持ちも高められます。集中力も改善した報告も聞きます。
抗うつ剤はふらつきによる転倒のリスクがあるので、ドネペジルで意欲を引き出します。
進行を抑えているのかどうかよく分からないが、「意欲の改善」に焦点を当てるとドネペジルの服用意義を評価をしやすいのではないかと思います。
●暴力・暴言など興奮している患者への使用は避けた方がいい
認知症の症状は人によってさまざまです。
特に「興奮して攻撃的な患者」にドネペジルを処方したら、余計に興奮させて介護しにくくなる、という声を聞きます。
意欲を高める作用を通り過ぎて「興奮」まで作用が高まってしまうからです。「易怒性」と言われます。
私が担当していたグループホームに往診できていた医師は、ドネペジル5㎎を服用していた日中大声をだしまくる患者の用量を3㎎に減量したら患者は落ち着きました。
意欲が低くて、活動しないことで心身に影響がでている患者に処方する、など症状をよく診て処方すべきだと思います。
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