認知症の方の転倒は「目」が原因?安心して暮らす住まいの工夫と照明

在宅

「最近、おじいちゃんが家の中でよくつまずくようになった…足腰が弱ったのかな?」 「部屋の隅を怖がって近づかないことがあるけれど、何か見えているの?」

ご家族からこのような相談を受けることがよくあります。 実はこれ、単なる筋力低下や幻覚だけが原因ではないかもしれません。

認知症、特にアルツハイマー型やレビー小体型の認知症の方々は、**「視覚(見え方)」や「空間認識」**に特有の変化が起きていることが多いのです。

今回は、私、薬剤師の甘尾 廉次(レンジ)と、同僚の舞さん、そしてベテランケアマネジャーの小笠原さんと一緒に、**「認知症の方が安心して暮らせる住まいと視覚の関係」**について深掘りしていきましょう。


なぜ「見え方」が変わるのか?認知症と視覚の関係

:「レンジさん、認知症というと『物忘れ』のイメージが強いですけど、『目』も悪くなるんですか?」

レンジ:「視力そのものが低下するというよりは、『目から入った情報を脳が正しく処理できなくなる』といったほうが正確かな。これを視空間認知障害と言ったりするんだ。」

認知症の方に見られる視覚的な変化には、主に以下のような特徴があります。

  1. 視野が狭くなる(トンネル視)
    • 健康な成人の視野は左右180度以上ありますが、高齢になると狭くなり、認知症の方はさらに狭く、目の前の一部しか認識できていないことがあります。
  2. 奥行きがわからなくなる
    • 段差の高さや、目の前のコップまでの距離感が掴みにくくなります。
  3. 色のコントラスト(明暗)が判別しにくくなる
    • 白い床に白い手すりがあっても、同化して見えてしまい、認識できません。
  4. 錯視(パレイドリア)や幻視
    • 壁のシミが虫に見えたり、洋服の影が人に見えたりすることがあります。

家の中が「怖い場所」に?危険なポイントと改善策

ここで、住環境整備のプロフェッショナル、ケアマネジャーの小笠原さんにお話を伺いましょう。

小笠原:「お薬のことはレンジさんにお任せですが、お部屋の環境については私の出番ですね。実は、良かれと思って敷いている『あのアイテム』が、認知症の方には危険な落とし穴に見えていることがあるんですよ。」

① 幾何学模様のマットやカーペットはNG!

小笠原:「複雑な柄の入ったカーペットや、白黒のチェック柄のマット。これ、認知症の方には**『床に穴が開いている』とか『何かがうごめいている』**ように見えることがあるんです。」

  • 問題点: 濃い色の模様を「段差」や「穴」と誤認し、避けようとして転倒したり、恐怖で足がすくんで動けなくなったりします(すくみ足)。
  • 改善策: 無地で、明るすぎない中間色のマットに変更しましょう。

② 「影」をつくらない照明の工夫

レンジ:「レビー小体型認知症の方などは、部屋の隅にできる『影』を、子供や動物、あるいは怖い人影と見間違える『幻視』が出やすい傾向にあります。」

  • 問題点: 一点から照らす強い照明は、濃い影を作ります。その影が動き出したように見え、不安感や徘徊の原因になります。
  • 改善策: 部屋全体を均一に照らすシーリングライト推奨です。また、夜間のトイレへの動線には、足元を優しく照らすセンサーライトを設置しましょう。真っ暗闇は不安を増大させます。

③ 色のコントラスト(メリハリ)をつける

:「清潔感があるからって、壁も床もトイレも全部『白』にするのは良くないってことですか?」

レンジ:「その通り。境界線が消えてしまうんだ。」

  • トイレ: 便器が白なら、便座のフタは色付きにする。壁には手すりの色がはっきり分かるもの(白壁なら茶色や紺の手すり)を設置する。
  • 食事: 白いご飯を白い茶碗によそうと、どこまでご飯かわからず食べこぼしの原因に。黒や朱色の器を使うと、食事がはっきり認識でき、食欲も湧きやすくなります。

住環境を変えるだけで、薬が減らせる?

実は、住環境を整えることは、薬物療法と同じくらい、時にはそれ以上に重要です。

「落ち着きがない」「暴れる」といった周辺症状(BPSD)に対して、すぐに鎮静系の薬を使うのではなく、**「なぜ怯えているのか?」「何が見えているのか?」**を考えることが大切です。

小笠原:「『部屋のカーペットを無地に変えただけで、夜ぐっすり眠れるようになった』というケースは本当に多いんですよ。」

レンジ:「不安の原因を取り除けば、睡眠薬や安定剤を減らせる可能性があります。これは薬剤師としても一番嬉しい結果ですね。」


まとめ:家族ができる「見え方」への配慮

認知症の方の住まいを考える際のポイントをまとめます。

  1. 床は無地が基本。 複雑な柄や濃い色のラグは避ける。
  2. 照明は明るく均一に。 影を作らない工夫と、夜間の足元灯を活用。
  3. 色のメリハリを大切に。 手すりや食器は、背景と同化しない色を選ぶ。
  4. 鏡や光る床に注意。 鏡に映った自分を他人だと思って話しかけたり、怖がったりする(鏡徴候)場合は、鏡に布をかけるなどの配慮を。

:「なるほど…。『見えにくい』って、視力だけの話じゃないんですね。私も薬局で患者さんと話すとき、お家の様子も聞いてみるようにします!」

住まいの環境調整は、ご本人だけでなく、介護するご家族の負担軽減にもつながります。 もし、「どうすればいいか分からない」と迷ったら、担当のケアマネジャーさんや、私たち薬剤師にも気軽にご相談くださいね。


【出典・参考文献】

  • 厚生労働省:認知症施策の総合的な推進について
  • 日本建築学会:認知症高齢者のための住環境整備ガイドライン

「夜中のトイレ、廊下の電気をつけると眩しすぎて目が覚めてしまう…でも真っ暗は危ない」そんなお悩みにはこれ。コンセントに差すだけで、人が通るとふわっと足元を照らしてくれるライトです。影を作りにくい優しい光なので、認知症の方の「見間違い」による恐怖感も軽減してくれますよ👇

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「最近、食べこぼしが増えた」「食事に手を付けない」…それは、白いご飯が白いお皿に同化して見えていないからかもしれません。内側が朱色や黒など、食材とのコントラストがはっきりする器に変えるだけで、食欲が戻ることがあります。軽くて割れにくい素材なのも安心ポイントです👇

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