居宅療養管理指導と訪問薬剤管理指導の違いをわかりやすく解説【薬剤師向け】

在宅

在宅医療に関わる薬剤師が必ず知っておくべき「居宅療養管理指導」と「訪問薬剤管理指導」の違いについて、具体的に整理しました。

「どちらで算定すべき?」「必要書類は?」「ケアマネとの連携は?」といった実務上の悩みに応える内容です。比較表とステップごとの解説で、薬局業務の理解が深まります。


【早わかり比較表】居宅療養管理指導 vs 訪問薬剤管理指導

項目居宅療養管理指導訪問薬剤管理指導
保険制度介護保険医療保険
優先順位原則、介護保険が優先される介護保険なければ算定
算定回数の上限月4回まで
(特定条件下で8回まで可能)
※中心静脈栄養や末期がん等
左記に準ずる
訪問計画書必要必要
契約書・重要事項説明書必要不要
処方せんの記載「訪問指示」必要
ややこしいので必要と認識していたほうが無難
左記に準ずる
報告書の提出先ケアマネジャーと処方医処方医のみ

令和7年度 点数/単位比較表(薬剤師による在宅訪問)

訪問形態/対象居宅療養管理指導(介護保険/1回あたり単位)訪問薬剤管理指導(医療保険/1回あたり点数)
単一住宅内の患者が1人518単位650点
単一住宅内の患者が2~9人379単位320点
同住宅10人以上342単位290点
在宅中心静脈栄養対象患者特例で月8回、週2回まで算定可(追加加算150点相当)150点加算/回

STEP1:そもそも制度の違いとは?

  • 居宅療養管理指導は「介護保険制度」に基づくサービスで、要介護認定(要支援)を受けた方が対象です。要支援の場合、厳密には介護予防居宅療養管理指導費として算定しますが、内容は居宅療養管理指導費と同じです。
  • 訪問薬剤管理指導は「医療保険制度」に基づくサービスで、介護保険の対象外となるケース(例:非介護認定者、介護保険の利用限度を超えた場合など)に用います。

STEP2:算定回数のルールに注意

  • 居宅療養管理指導では、1人あたり月4回まで算定できます。
  • 中心静脈栄養の管理末期がんの緩和ケアといった特例に該当する場合は、月8回まで算定可能です。
  • 訪問薬剤管理指導は上記に準ずると解釈します。

STEP3:処方せん記載と報告書対応

  • どちらも処方せんに医師からの「訪問指示」の表記が必要と認識しておいたほうが無難です。なければ疑義照会にてコメントをもらって備考欄に記録しておきましょう。
  • 報告書の提出先は以下の通りです:
    • 居宅療養管理指導:ケアマネジャー処方医
    • 訪問薬剤管理指導:処方医のみ

STEP4:書類対応の違い

書類居宅療養管理指導訪問薬剤管理指導
訪問計画書必要(定期更新も)必要
契約書・重要事項説明書必要不要
報告書ケアマネ+医師へ提出医師のみに提出

STEP5:処方せん1枚で複数回算定できる?

はい、可能です。

  • 処方せんに基づく薬剤の服用期間中であれば、1回に限らず複数回の算定が可能です。
  • ただし、算定日の間隔は6日以上あける必要があります。
  • 例えば、14日処方で7日分ごとに患者宅へ訪問し、必要な薬学的管理(服薬指導、服薬状況把握、保管状況の把握、薬歴記載など)を行えば、2回算定できると考えます(1回目の訪問、2回目の訪問でそれぞれ算定可能)。
  • 処方せんで交付された薬を患者宅へ届けるための報酬ではないので、1回しか算定できないということではありません。

STEP6:報告書は毎回提出が必要?

  • 居宅療養管理指導の場合、ケアマネ・医師への報告が原則必要ですが、算定回数分すべて提出が必須とはされていません(必ずしも“その都度”と明記されていないから)。1回目の訪問結果を報告書で提出し、2回目の訪問で特に報告事項なければ、報告書は不要、と解釈できます
  • ただし、訪問の必要性が高かったケース等、必要に応じ報告を行うのが望ましいとされています。

STEP7:距離の問題(お届け範囲)

訪問薬剤管理指導料の場合、薬局から届け先(自宅や施設)まで「16キロメートル以内(直線距離にして)」とされています。居宅療養管理指導は規定はないが、緊急時に対応できる範囲として、同じく16キロメートルを目安にしているケースが多いようです。

実務上の注意点や流れのまとめ

  • 当該患者についてケアマネや医療機関から在宅調剤の依頼を受ける、または薬局から在宅調剤を医療機関に提案して同意を得る。
  • 対象者が介護保険利用者かどうか確認する。介護保険証の有無と認定期間を確認。原則、介護保険を利用していたら、居宅療養管理指導料を算定する。介護認定を受けていないのなら、訪問薬剤管理指導料を算定する。
  • 介護保険利用者なら、原則ケアマネジャーがいるはずなので情報共有を事前にしておく。患家までの距離を把握しておく。
  • 居宅療養管理指導は契約書と重要事項説明書の取り交わしを、患者本人または家族と行う。
  • 交付された処方せんに「訪問指示」の有無を確認
  • 居宅療養管理指導は、訪問計画書策定が必須。原則、訪問前に作っておきましょう
  • 患者宅または施設等訪問し、必要な服薬管理を実施したら、居宅療養管理指導報告書(訪問薬剤管理指導報告書)を処方医とケアマネジャーにそれぞれ提出する。訪問薬剤管理指導報告書なら処方医のみに提出。薬歴記載も忘れずに。

参考資料・出典

  • 厚生労働省「在宅患者訪問薬剤管理指導及び居宅療養管理指導に関するQ&A」
  • 全国健康保険協会 医療報酬点数表
  • 一般社団法人 日本薬剤師会「在宅医療に関するQ&A」など

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