はじめに ~不安からはじまった家族の介護の一歩~
「親が認知症になったかもしれない…病院ではそう診断されました。でも、どこへ相談すればいいのか、誰に相談すれば安心なのか、何から始めればいいのか、全くわからず、夜も眠れないほど不安でした。」
そうした患者家族の体験から、本記事では「認知症と診断されたらどこに相談すればいいのか」を中心に、地域資源や制度の利用についてわかりやすくまとめます。介護に慣れていない方、ご家族として初めて介護と向き合う方にも読んでいただければ幸いです。
1. 認知症と診断されたら、まずは“誰に”“どう相談する”?

1-1. 病院の地域連携室へ「介護相談」をお願いする
病院で認知症と診断された場合、多くの医療機関には「地域連携室」が設置されています。診断後、ご家族が「今後どのように支援を受けたらいいか」と伝えれば、地域包括支援センターやかかりつけ医、ケアマネジャーへ橋渡ししてもらえることがあります。
私の患者さんの家族が、地域連携室へ「これから在宅でどんな支援が受けられるのか知りたい」と相談したことで、その日のうちに地域包括支援センターへ連絡をしてもらえ、初回の相談に進むことができました。
1-2. 家族が直接地域包括支援センターへ連絡する
もちろん、病院からの紹介がなくても大丈夫です。自分で地域包括センターに連絡もできます。
地域包括支援センターは「高齢者とその家族」「生活に困りごとのある方ならどなたでも」相談できます。電話での相談対応から始まり、後日、電話か訪問で支援内容を整理してもらい、「とても心強かった」との声も聞きました。
2. 地域包括支援センターの「できること」「相談できる人」
2-1. 相談できるのは「家族」も対象です
地域包括支援センターには、ご本人だけでなく、ご家族も相談できるシステムがあります。うろたえた患者家族に対して「介護は一人で抱えず、まずはあなたの不安を整理しましょう」と言っていただき、精神的にも救われました、とのこと。
2-2. 具体的に相談できる内容
地域包括支援センターでは、以下の相談が可能です:
- 介護保険サービス利用のアドバイスや申請手続きの支援
- 認知症の人向け支援(家族会や認知症サポーター講座など)
- 虐待や権利擁護に関する相談
- 介護や福祉、医療の調整や案内
家族も相談を通じて、短時間でも介護の見通しが見えるようになり、「今、何をすればいいか」がはっきりしたことで、気持ちが楽になりました。
3. 制度化されたサービスと、地域の“柔らかい手”

3-1. 介護保険制度を活かす
介護認定を受けてケアマネジャーを立てることで、訪問介護(ホームヘルパー)、デイサービス(通所介護)、ショートステイ(短期入所)など、多様な介護サービスを組み合わせられます。家族も、週に数回の訪問介護を取り入れ、家族の負担が大きく減り、生活リズムが整いました。
3-2. 医療と薬剤師の視点でのサポート
認知症になると、服薬の管理が難しくなることも多いです。薬剤師として注目する点は、訪問薬剤管理指導や薬局による一包化、服薬カレンダーの活用です。定期的に薬剤師が訪問してくれることで、飲み忘れや重複投薬を防ぎ、安心して薬を整えることができました。
4. インフォーマル資源の活用とその限界
地域のサロンや町内の見守り活動、配食サービスなど、いわゆる「インフォーマル資源」は生活を支える大きな助けになります。近所のサロンで顔見知りが増え、「誰かがいつも見守ってくれている」と感じることができ、孤独感が軽減されました。
ただし、こうした支援には限界があるのも事実です。担い手の高齢化や不足、継続性の問題、サービス内容のばらつきなど、場合によっては頼り切れないこともあります。だからこそ、正式な制度と両輪にして取り入れることが大切です。
5. 「相談の窓口」を意識することで見通しは変わる
親の認知症診断から、地域の支援につながるまでの間、「どこへ相談すればいいかわからず、手探りだった」経験をされている方は少なくありません。しかし、地域包括支援センターを知って相談したことで、安心感が得られただけでなく、次の段階へ進む道が見えてきました。
- 病院の症状説明が終わった後、「誰とどうつなぐか」が明確になること
- 家族が思い切ってセンターに相談することからすべてが始まること
- 制度と地域を両輪にして支援を組み立てることが有効であること
これらは在宅介護の土台となる大切なポイントです。
6. まとめ
| ステップ | やるべきこと |
|---|---|
| 1. 病院(地域連携室)への相談 | 介護支援につながる一歩目を設けてもらう |
| 2. 家族自身の連絡 | 地域包括支援センターへ直接相談し、不安を整理する |
| 3. ケアマネジャーの選定・サービス活用 | ケアプランに沿って制度サービスを利用する |
| 4. 服薬や医療との連携 | 薬剤師など医療面も含めた支援体制を整える |
| 5. インフォーマル資源の併用 | 地域の見守りやサロンなど温かい支援を追加する |


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