ドネペジルなど“従来の中核症状治療薬”と“最新の認知症薬”の比較ーレカネマブやドナネマブとは

ドネペジルなど“従来の中核症状治療薬”と“最新の認知症薬”の比較ーレカネマブやドナネマブとは

1. 従来の認知症治療薬:進行を抑える対症療法

ドネペジル(アリセプト)を中心とした治療戦略

アルツハイマー型認知症の薬物治療は、ドネペジルをはじめとする神経伝達物質を調整する薬剤が中心です。これらは、脳内のアセチルコリンやグルタミン酸といった神経伝達に関わる物質のバランスを整え、認知機能の維持や進行遅延を目指します。

薬剤名一般名作用機序対象
アリセプトドネペジルアセチルコリンエステラーゼ阻害軽度~重度アルツハイマー型認知症
レビー小体型認知症
レミニールガランタミン+ニコチン受容体活性化軽度~中等度
イクセロンパッチ/リバスタッチリバスチグミンコリンエステラーゼ阻害(2系統)軽度~中等度
メマリーメマンチンNMDA受容体拮抗中等度~重度

2. 新薬の登場:疾患修飾薬で“発症そのもの”を遅らせる

アミロイドβへの直接作用で根本治療へ

アルツハイマー病の特徴であるアミロイドβの脳内蓄積。これを標的としたのが、抗アミロイド抗体薬であるレカネマブドナネマブです。これらの新薬は、認知症の進行を遅らせるだけでなく、「発症そのものを遅らせる可能性」があるとする研究結果も発表されており、国際的にも大きな注目を集めています。

レカネマブ(商品名:レケンビ)

  • 開発:エーザイ × バイオジェン
  • 承認:2023年 日本・米国
  • 対象:MCIまたは軽度のアルツハイマー型認知症
  • 投与:2週間ごとの点滴(静注)
  • 特徴:発症を最大約3年遅らせる可能性があると報告

ドナネマブ

  • 開発:イーライリリー
  • 承認:2024年 米FDA承認済(日本審査中)
  • 投与:月1回の点滴
  • 対象:アミロイド陽性 + タウ病理が中等度以下
  • 特徴:アミロイドβの除去進捗に応じて治療終了も可能

3. 両者の比較:目的は同じ「進行抑制」、違いは“アプローチと可能性”

項目従来薬新薬
主な作用神経伝達物質の調整アミロイドβの除去
目的認知機能低下の進行抑制発症遅延と進行抑制
対象軽度~重度MCI~軽度の認知症
投与方法内服・貼付点滴静注
使用条件比較的自由診断検査・継続通院必要
副作用比較的軽度ARIA(脳浮腫・出血)の可能性
発症予防の可能性限定的数年単位で遅延可能性あり

4. 誰にどの薬を使うのか?現場での判断と課題

中等度~重度の認知症患者にとって、ドネペジルなど従来薬は今でも現場の主力です。一方、新薬は以下のようなハードルがあります。

  • アミロイドPETや脳脊髄液による診断が必要
  • 2週~4週ごとの点滴治療と通院継続
  • MRIなどの副作用モニタリング体制
  • 高額な薬剤費と社会保障の課題

5. 薬剤師・介護職が果たす役割とは

薬剤師や介護職は、本人と家族の治療選択を支える「説明と支援」のプロです。従来薬・新薬それぞれの特性を理解し、次のような支援を行うことが求められます。

  • 正確な情報提供と期待値の整理
  • 副作用の理解と見守り
  • 受診や点滴治療の支援体制づくり
  • チーム医療としての連携

まとめ:治療は進化し続ける。“その人らしさ”の継続を目指して

認知症治療薬には2つの方向性があります。

  • 従来薬:神経伝達を補い、進行を抑える
  • 新薬:病因に介入し、発症そのものを数年遅らせる可能性

どちらも目的は「その人らしさを長く保つ」ことにあります。新薬は大きな希望を与える一方で、すべての患者に使えるものではありません。今後は、医師・薬剤師・介護職・家族が一体となって、その人にとっての最適な治療を支えるチーム医療が一層求められます。

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