「指示を待つばかりのスタッフ」「モチベーションが低い」「すぐに辞めてしまう」――。そんな悩みを抱える薬局マネージャーや薬局長は少なくありません。
しかし、リーダーの関わり方ひとつで、スタッフは見違えるように「自走」し始めます。そのヒントになるのが、アドラー心理学に基づく「勇気づけ」のマネジメントです。
目次
- アドラー式「勇気づけ」とは何か?
- 「褒める」ではなく「勇気づけ」が必要な理由
- 薬局現場での「勇気づけ」実践例
- スタッフが“自走”し始める仕組み
- 勇気づけを阻む3つの落とし穴
- まとめ:人は変えられない。でも関わり方は変えられる
アドラー式「勇気づけ」とは何か?
「勇気づけ(Encouragement)」とは、アドラー心理学の中核をなす考え方です。ここでいう“勇気”とは、「困難を克服する力」や「課題に向き合うエネルギー」のこと。
勇気づけとは、相手が自分の価値を感じ、自ら行動を起こせるようにする関わり方です。つまり、相手に“力を与える”コミュニケーション。依存を生まず、自発性を育てます。
「褒める」ではなく「勇気づけ」が必要な理由
一見似ている「褒める」と「勇気づけ」ですが、決定的な違いがあります。
- 褒める:上から下への評価。良い行動の時だけ与えられる。
- 勇気づけ:対等な立場からの共感。存在そのものに価値を見出す。
「褒める」は一時的にやる気を引き出しますが、続けると承認欲求依存に陥るリスクがあります。一方「勇気づけ」は、相手の内側から「やってみよう」という意欲を引き出します。
薬局現場での「勇気づけ」実践例
私が支援したある薬局では、30代のスタッフAさんが「私は何をやってもダメだから」と自己評価が低く、必要最低限の仕事しかできていませんでした。
そこで薬局長がアドラー式マネジメントを導入。「Aさん、〇〇さんの処方の準備、誰より早かったですね」「昨日の患者さん対応、Aさんの声かけでスムーズでしたね」と、具体的な行動に焦点を当てて“勇気づけ”を始めました。
すると、Aさんは徐々に「自分もチームの役に立てている」と自覚し、次第に新しい業務に挑戦するように。半年後には後輩指導まで担うようになりました。
スタッフが“自走”し始める仕組み
- ①行動を具体的にフィードバック
「ありがとう」や「すごい」だけでなく、「○○したから、助かった」と事実ベースで伝える - ②失敗にも価値を見出す
「その失敗から何を学べた?」と問い、成長機会に変える - ③評価より関心
「どう感じた?」「どうしたい?」と問いかけ、スタッフの内発的動機を育む
こうした関わりを続けることで、スタッフは上司の顔色ではなく、自分の内側の“やる気スイッチ”で動けるようになります。
勇気づけを阻む3つの落とし穴
- ①すぐに結果を求めてしまう
「自走させたい」という気持ちが強すぎると、逆にコントロールになってしまう。 - ②他人と比較してしまう
「〇〇さんはもっとできるよ」と言われた本人は、自信を失う。 - ③完璧を求めすぎる
ミスや遠回りを否定せず、「プロセス」に価値を置くことが大切。
勇気づけには「待つ力」も必要です。土に蒔いた種が育つには、日々の光と水、そして時間が不可欠です。
まとめ:人は変えられない。でも関わり方は変えられる
スタッフを動かそうとするのではなく、「動けるようにする」こと。それがアドラー式マネジメントの神髄です。
勇気づけとは、魔法の言葉ではなく、相手を信じて関わる姿勢そのもの。自走するスタッフを育てるには、評価よりも信頼、指示よりも対話が求められます。
まずは今日から、スタッフ一人ひとりの“小さな変化”や“行動”に目を向け、「あなたを見ているよ」「ここにいてくれて嬉しい」と伝えることから始めてみませんか?
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