「認知症治療の今と未来|家族が知っておきたい最新薬と研究動向」

生活支援

認知症は、誰にとっても身近な病気になりつつあります。2025年の今、認知症の治療薬や診断方法は急速に進歩しており、「早期発見・早期対応」の時代に近づいています。本記事では、ご家族に向けて、最新の薬や研究、そして日常生活で役立つ情報をまとめました。


1.今、注目されている新しい治療薬

1-1. レカネマブ(商品名:レケンビ)

最も話題になっている薬が、**レカネマブ(レケンビ)**です。これは、認知症の原因のひとつとされる「アミロイドβ」というたんぱく質を取り除く働きがあります。海外の研究では、症状の進行を約3割遅らせる効果が確認されました。

  • 対象となる人:軽度認知障害(MCI)や、認知症の初期段階の方
  • 投与方法:2週間ごとに点滴が必要です。アメリカでは自宅で皮下注射が可能な製剤も発売された。日本でも年内に承認申請する予定。
  • 注意点:脳のむくみや出血などの副作用(ARIA)があり、MRIでのチェックが必要です。

1-2. ドナネマブ(商品名:キスンラ)

レカネマブと同じく、アミロイドβを標的にした新薬です。2024年にアメリカとイギリスで承認され、日本でも導入が検討されています。

  • 特徴:効果が出やすい人とそうでない人がいるため、検査で体質を見極めて使う必要があります。

1-3. これから期待される薬たち

  • TB006:脳の炎症を抑え、アミロイドを溶かす可能性のある新薬。臨床試験が進行中です。
  • 抗タウ薬:記憶障害の進行に関係する「タウたんぱく質」を標的にした薬の研究も進んでいます。
  • がん治療薬の転用:乳がんや大腸がんの薬を組み合わせ、認知症の症状を改善したという動物実験の成果も発表されています。

2.診断・検査の進歩

「早く見つけること」が、治療や生活の質の向上につながります。最近は、血液検査やデジタル技術が大きく進化しました。

2-1. 血液でわかる認知症リスク

2025年には、血液検査でアルツハイマー型認知症の兆候を調べられる検査が米国で承認されました。採血だけで検査でき、体への負担がほとんどありません。日本でも数年以内に普及すると予想されています。

2-2. タブレットでできる3分検査「MIREVO®」

大塚製薬が開発した「MIREVO®」は、タブレットを使った眼球運動の測定で認知機能をチェックできるシステムです。2025年から保険が使えるようになり、病院やクリニックで気軽に受けられるようになりました。

2-3. AIを活用した診断サポート

MRIや血液検査、生活データを組み合わせ、AIが「認知症の種類や進行度」を分析する研究も進んでいます。近い将来、もっと正確で早い診断が期待されています。


3.生活習慣と予防の研究

認知症は「生活習慣の工夫」で進行を遅らせることができる可能性があります。

3-1. 地中海食が注目されています

魚、野菜、果物、オリーブオイル、ナッツ類を中心にした「地中海食」が、認知症の発症リスクを下げることがわかっています。特に遺伝的にリスクが高い人でも、発症リスクが35%低くなるという報告もあります。

3-2. 運動・音楽・アートの効果

ウォーキングや筋トレ、ダンス、歌や楽器演奏、絵を描くなどの活動は、脳に刺激を与えて進行を遅らせる効果があるとされています。特に人との交流を伴う活動は、うつ症状や不安を和らげることにも役立ちます。

3-3. 社会とのつながりがカギ

東京都町田市では、認知症の人が地域のカフェやサークルで活動できる場を提供しています。こうした活動は、認知症の進行を遅らせるだけでなく、介護する家族の心の支えにもなっています。


4.薬を使うときの注意点

新しい薬は希望を与えてくれますが、効果には限界があり、副作用や費用も考慮する必要があります。

  • レケンビやキスンラは、脳のむくみや出血が起こることがあります。
  • 投与開始前にはMRIや遺伝子検査が必要です。
  • 治療費は高額で、保険適用の範囲や助成制度を確認することが大切です。

薬だけに頼らず、生活習慣の見直しやリハビリ、介護サービスの活用を組み合わせて「総合的に支えること」が重要です。


5.これからの展望

  • 早期診断・早期治療の体制が整いつつあります。
  • アミロイドだけでなく、「タウたんぱく質」や「脳の免疫細胞(ミクログリア)」に働きかける薬の研究が進んでいます。
  • AIや遺伝子検査を使った「個別化医療」によって、より一人ひとりに合ったケアができるようになるでしょう。

まとめ

認知症の治療はここ数年で大きく進歩していますが、まだ「治る薬」はありません。しかし、進行を遅らせる薬早期発見の技術が整ってきたことで、患者さん本人も家族も前向きに過ごせる時間を延ばせる可能性が広がっています。

家族としてできることは、

  • 定期的な健康チェックを受ける
  • 栄養・運動・睡眠のバランスを意識した生活を送る
  • 地域や専門家とのつながりを大切にする

この3つを心がけながら、最新の情報を正しく理解して、焦らず、希望を持ってサポートしていくことが大切です。


出典(主要参考文献)

  • Eisai公式発表(レカネマブ)
  • Mayo Clinic, UCSF研究報告
  • Fujirebio社 血液検査技術公開資料
  • 大塚製薬 MIREVO®保険適用情報
  • Arxiv AI診断研究 MINDSETS, SERENADEプロジェクト
  • Self.com「地中海食と認知症リスク」
  • 日本認知症ケア政策および町田市モデル事例

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