「言っても伝わらない」薬局長がやってしまいがちなNG指導とその改善策

ビジネススキル

─ 指示が届かない原因と、伝わる言葉の選び方 ─

薬局長としてスタッフに日々指示を出しているのに、「何度言っても伝わらない」「指示したはずなのにやってくれていない」と感じたことはありませんか?
一生懸命伝えているつもりでも、スタッフには届いていない──それは薬局長にとって非常にストレスフルな体験です。

本記事では、薬局長が陥りやすい“伝わらない指導”のパターンとその背景、そして明日から実践できる「伝わる言葉」の選び方・伝え方の改善策について解説します。

よくあるNG指導①:「ちゃんとして」「しっかりやって」

薬局長:「もっとちゃんとしてくれる?」「しっかり報告してよ」

一見、一般的な表現ですが、このような抽象的な言葉は、人によって解釈がバラバラです。
例えば「ちゃんと在庫管理して」と言われても、Aさんは「一日一回の確認」で良いと思っているかもしれませんし、Bさんは「納品時だけ確認すれば十分」と感じているかもしれません。

▶ 改善策:具体的な行動レベルで伝える

伝わる指導に必要なのは、「いつ」「どこで」「何を」「どうやって」行うかという具体性です。

  • 「毎朝9時にOTC棚の前で、帳票と在庫を照らし合わせて確認してほしい」
  • 「納品があった日は、15分以内に検品と在庫入力まで完了させてください」

このように、曖昧な言葉を避け、行動ベースの指示にすることで、スタッフは“何をどうすればいいのか”を明確に理解できます。

よくあるNG指導②:「前にも言ったよね?」

この言葉は、指導ではなく責めになってしまうことが多い表現です。
言われた側は「怒られている」「責められている」と感じ、防御的な態度になりがちです。

▶ 改善策:記録をもとに確認し、次のステップを示す

「面談ノート」や「指導記録」を簡潔に残しておくことで、過去のやりとりを共有しながら建設的な会話ができます。

  • 「4月の面談で“在宅準備リストを使ってチェックする”って話したね。実際どう?やってみて何か困ってる?」
  • 「前回、調剤監査の見直し方法を一緒に考えたよね。あれから何か変わった?」

過去の指導を“振り返り”として活用しながら、スタッフと一緒に改善のプロセスを歩む姿勢が、信頼関係の土台となります。

よくあるNG指導③:「なんでやらないの?」

この言葉は、無意識のうちに詰問になってしまいます。
言われた側は「責められている」と感じ、自分を正当化するか、黙り込んでしまうことが多いものです。

▶ 改善策:「なぜ?」ではなく「どうしたらできそうか?」と問う

行動が伴っていない背景には、時間的制約、理解不足、優先順位のズレ、メンタル的負担など、さまざまな要因が隠れていることがあります。

  • 「今やれていない理由って、何かある?」「何が障害になっていると感じる?」
  • 「この業務をスムーズに進めるために、何か工夫できることあるかな?」

問いかけの姿勢を持ち、「一緒に考える」関係性を築くことで、スタッフは安心して本音を話し、改善への一歩を踏み出しやすくなります。

そもそも伝わらない理由は、“指示”だけで完結しているから

「伝える」と「伝わる」は違います。
一方的に“言った”だけでは、「伝わった」とは言えません。重要なのは、相手がどう受け取ったか、どう理解し、どう行動に移したかです。

つまり、指示したあとに以下の確認が必要です:

  • 相手はどう理解していたか
  • 実際に行動できる状況か
  • フォローは適切にできているか

伝える力を高める3つの工夫

1. 相手目線の言葉に変換する

薬局長の“常識”は、スタッフにとっての“非常識”である場合もあります。
自分が当たり前と思っている言葉が、他者には伝わっていないかもしれない。だからこそ、相手の立場・スキル・経験値に合わせた言葉に変換する意識が大切です。

2. 伝えた内容は、メモやチェックリストに残す

口頭だけで済ませると、記憶の中で薄れていきます。
簡単なTODOメモやGoogleフォーム、LINEの業務連絡グループなどを活用し、「可視化」して伝えることで、指示の正確性と実行力が高まります。

3. 定期的な1on1面談で、理解度と実行度を確認する

伝えっぱなしではなく、「やってみてどうだった?」と聞くことが重要です。
面談を定期的に設けることで、スタッフ一人ひとりの実行状況やモチベーションの変化を確認でき、タイムリーな支援が可能になります。

まとめ

「何度言っても伝わらない」と感じるときは、まず自分の伝え方を振り返ってみることが第一歩です。

  • 抽象的な言葉ではなく、具体的に
  • 責める言葉ではなく、共に考える姿勢で
  • 記録と面談を活用し、継続的な関わりを持つ

スタッフが“動ける言葉”を届けることができれば、薬局のチーム力は大きく変わります。
伝え方を変えれば、チームは変わる。薬局長としてのコミュニケーション力が、現場を育てる最大の武器です。

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