「人は変えられない」を受け入れた薬局長がうまくいく理由

ビジネススキル

アドラー心理学に学ぶ“課題の分離”の極意

■「異動が伝えられない」薬局長の葛藤から始まった話

ある薬局長が、スタッフの異動を伝えることができずに悩んでいた出来事がありました。

そのスタッフは、何かと言い返してきたり、感情的になりやすく、正直言って「関わるのが苦手なタイプ」。

薬局長は、「異動を伝えたら拒否されるのではないか…」「反発されたらどうしよう…」と頭を抱えていました。

伝えなければいけないのはわかっている。でも、どうしても相手の反応が怖い。このような葛藤は、現場のマネジメントではよくある話です。

そこで私は、こうアドバイスしました。

「あなたがやるべきことは“伝えること”だけです。
異動を受け入れるかどうかはそのスタッフの問題であり、あなたが結果に責任を負わなくていい。
“伝える”ことに集中しましょう。」

その後、薬局長は勇気を出して異動を伝えることができました。スタッフは戸惑いながらも、最終的には異動を受け入れました。

薬局長は、後日こう語ってくれました。

「伝えることはとても怖かったけど、アドバイスを受けて“自分の課題”だけに集中できました。」

この出来事は、まさにアドラー心理学の「課題の分離」の実践でした。

■アドラー心理学が教えてくれること:人は変えられない

アドラー心理学の中核にあるのが、「人は他人を変えることはできない」という現実の受け入れです。

多くの薬局長が、「どうにかしてあのスタッフを動かさなければ」と悩みます。

しかし、アドラーは「人を変えることはできない」と言い切ります。

代わりに私たちができるのは、「自分がどう関わるかを選ぶこと」だけなのです。

■“課題の分離”とは何か?

アドラー心理学における「課題の分離」とは、「これは誰の課題か?」を明確にして、それ以外は手放すという考え方です。

異動を伝えることは薬局長の課題。でも、その異動を受け入れるかどうかはスタッフの課題です。

つまり薬局長は「伝える」責任があるが、「相手がどう感じ、どう選択するか」までは責任を負う必要はありません。

この視点があると、マネジメントは格段にラクになります。

■なぜ人は“他人の課題”まで背負ってしまうのか?

薬局長やマネージャーは、責任感が強く「相手のためを思って」行動する人が多いです。

だからこそ、

  • 指示を出したのに動いてくれない
  • 注意しても改善されない
  • 本音を聞き出せない

といった場面に直面すると、「自分の伝え方が悪かったのでは」と自責しがちです。

しかしそれは、“自分でコントロールできないもの”にエネルギーを注ぎすぎている状態なのです。

■薬局長が“背負わない”ことで、スタッフは自律する

先ほどの異動の話に戻りましょう。

あの薬局長が「伝えた結果、どうなるかまで自分が責任を負わなければいけない」と考えていたら、きっとずっと動けなかったでしょう。

しかし、「伝えることに集中する」と決めたことで、スタッフの自律性に任せることができました。

結果的に、スタッフは冷静に状況を受け止め、受け入れたのです。

「相手を尊重して任せる」という関わり方は、スタッフにとっても心地よく、自律的な行動を生みます。

■マネージャーの自由は「分離」から始まる

課題の分離ができると、以下のような変化が起こります:

  • 他人の感情に振り回されなくなる
  • 「やるべきこと」が明確になる
  • 無駄なストレスを感じにくくなる
  • 相手の変化を“待つ余裕”が持てる

これはマネージャーとして非常に大きな武器です。

日々の判断・関係づくり・感情コントロール…すべての土台が整っていきます。

■まとめ:「伝えること」はあなたの課題、「受け取ること」は相手の課題

マネジメントとは、必ずしも「うまくやること」ではありません。

むしろ、「背負いすぎないこと」「適切な距離を保つこと」が、健全な組織をつくる鍵です。

薬局現場では、時に難しい判断が求められます。

でも、そこで立ち止まりそうになったら、こう問いかけてください。

「これは誰の課題だろうか?」

その一言が、あなたの迷いを減らし、本当に必要な行動に集中する力をくれます。

そして、その積み重ねが、“人は変えられない。でも、チームは変えられる”という大きな結果へとつながっていくのです。

✅現場でできる小さな実践

  • 自分の中で「どこまでが自分の課題か」を線引きしてみる
  • 指導や伝達の場面では、「伝えること」に集中する
  • 相手の反応に過剰な期待をせず、信じて任せてみる

この考え方が、薬局マネジメントの中でのストレスを少しでも減らし、あなた自身が穏やかに・自信をもってスタッフと向き合える一助となれば幸いです。

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